概要
協力的な社会について,歴史的な経緯やWikipediaやLinuxのような近年特に顕著な協力の事例を取り上げ,人間の考え方や,方法について考察されている。
まず,この本においては「第10章 ペンギンの育て方」と「監訳者解説」を最初に読むことを強く薦める。
なぜかというと,書籍の大半が小難しく細かい議論が展開されているからだ。 人間の考え方などを振り返るのにあたり,リチャード・ドーキンスの利己的な遺伝子の話や他の経済学の原理や心理学の実験などがたくさん引用されており,読んでいてもつまらなかった。この内容がひたすら続くなら,評価は2にしていた。
しかし,最後の第10章でここまでさんざん議論されてきた協力関係のパターンを整理し,協力関係のための指針がまとめられていた。これがよかった。なにせ,このような協力関係のための指針が書かれた本はあまりないからだ。
そして,監訳者の解説が良かった。何回の書籍の大半をうまく噛み砕いて整理しており,最初のこの監訳者の解説を読んだほうがよかったなと感じた。そして,監訳者による本書の問題点の指摘が書かれており,ちゃんと考えて監訳したのだとわかった。監訳者の解説は今まであまり参考にならなかったので,ちゃんと読んでいたのだが,いい解説だった。
なお,副題のペンギンはLinuxのことで,リヴァイサンはトマス・ホッブスの著書 (普遍的利己性を想定するアプローチ) を指している。
参考
p. 229: 第10章 ペンギンの育て方
以下に挙げるのは本書を通じて示してきた証拠に基づき、成功する現実的な協力システムの要素だと私が信じるものだ。
- コミュニケーション。
- フレーミング、適合性、正真性。
- 自分を超えた視点 — 共感と連帯感。
- 道徳的システムの構築 — 公平性、道徳性、社会規範。
- 報酬と処罰。
- 評判、透明性、互恵性。
- 多様性を考慮して構築。
ながながと本文の大部分で議論されてきた内容のエッセンスがこの10章に詰められている。これらの要素を振り返り,本文中で取り上げられた過去の現実世界のさまざまな事例を見返すと,目の前の問題に役立てられるところが見えてきそうに感じた。
結論
書籍の大半は小難しくて細かい内容の議論が連続しており,はっきりいって読むのがしんどかった。しかし,これらの大量の事例と議論からまとめられた結論は,根拠があり,有益な結論だった。もう少しわかりやすくまとめてくれていれれば文句なかった。
自分で組織を率いるときやサービスを作るときなど,こうした要素を考慮して検討できれば,協力関係の得られるよい成果が得られるだろう。なかなかこうした情報が得られないので,貴重な本だった。
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