書評☆4: 嫌われる勇気 | 過去に縛られず,今の自分を受け入れて,今の自分に集中すること

概要

  • 書名: 嫌われる勇気
  • 副題: 自己啓発の源流「アドラー」の教え
  • 著者: 岸見 一郎 and 古賀 史健
  • 出版: 2013-12-12
  • 読了: 2020-04-04 Sat
  • 評価: ☆4
  • URL: book.senooken.jp/post/2020/04/16/

評価

人気の本ということで興味を持って読んだ。

世界3大心理学としてフロイト,ユングとともにあげられるアドラー心理学を解説している本だ。

悩みを持つ青年と哲人の2名の対話形式で話が進んでいく。青年の懐疑心は読者の疑問を代弁しており,少々手厳しいように感じたが,それをきっちり説き伏せていった。ある意味,アドラー心理学に対しての自信があるからできる形式だった。

対話形式であるため,具体例も数多く例示されていたため,内容を理解しやすかった。

「人を動かす」で有名なデール・カーネギーにも影響を与えた心理学ということで,期待しながら読んだが,期待通りの本だった。

それなりに量があり,内容を要約するのは少々難しい。目的論的で,共同体主義的な考え方がベースにあるように感じた。

今の自分を受け入れて (自己受容),他者と自分の課題を分離して,自分ができることに集中し,他者を信頼して横の関係を重視し,貢献感を獲得することが幸福への道という感じだった。

書名の「嫌われる勇気」というのも本文で解説されている。他者の評価を気にしてばかりいるのは,結局自己中心的であり,自由の欠如した貢献感しか得られない。自分と他人の課題を分離して,気にせず自分の集中することが大事という由来だった。

引用

p. 27: なぜ「人は変われる」なのか

ここではアドラー心理学が過去の「原因」ではなくいまの「目的」を考えるという特徴が説明されていた。

「不安だから、外に出られない」のではなく,「外に出たくないから、不安という感情をつくり出している」というのは,ありえるケースだ。

フロイトの原因論だとたしかに,過去のできごとで未来の全ても決まるという身も蓋もない考え方になってしまう。

p. 71: すべての悩みは「対人関係の悩み:である

ここではアドラーの「人間関係の悩みは、すべて対人関係の悩みである」という言葉が紹介されていた。極論そうなのかもしれない。

p. 80: 言い訳としての劣等コンプレックス

ここでは劣等感と劣等コンプレックスの違いについて説明されていた。劣等感自体は向上したいと思う状況であり,悪いものでもない。ただし,劣等感を言い訳に使い始めた状態を劣等コンプレックスと呼んでいる。AだからBできないというのはよくあることで,これが劣等コンプレックスであり,よくない状況だ。例えば,「学歴が低いから出世しない」などがそうだろう。

p. 95: 「お前の顔を気にしているのはお前だけ」

ここでは「対人関係の軸に「競争」があると、人は人間関係の悩みから逃れられず、不幸から逃れることができません。」という言葉が印象に残った。

この後に,人格攻撃された場合の話があり,「そもそも主張の正しさは、勝ち負けとは関係ありません。あなたが正しいと思うのなら、他の人がどんな意見であれ、そこで完結するべき話です。」という言葉印象になった。

自分が正しいと思ったら,そこで完結することにする。

p. 146: 対人関係の悩みを一気に解消する方法

ここではアドラー心理学の特徴の一つとして,承認欲求の否定と自分と他者の課題の分離という話が展開された。

他人の課題は他人がどうこうする話で気にする課題ではなく,自分の課題に集中し,それについて他者がどういう評価を下すかというのは他者の課題であり,自分にはどうにもできない話という話があった。

他人の評価をどうにかできないというのはたしかにそうだ。

p. 162: ほんとうの自由とはなにか

ここでは承認欲求と自由についての話があった。その中で,署名にもある「自由とは、他者から嫌われることである。」という言葉があった。

誰からも嫌われずに生きるということは,他者の評価を気に掛け生きることであり,結局それは自分中心の生き方になるという話だった。

p. 179: 対人関係のゴールは「共同体感覚」

ここで課題の分離は対人関係の出発点で,ゴールは共同体感覚というやりとりがあった。

共同体主義的な考え方があるのだなと感じた。

p. 182: なぜ「わたし」にしか関心がないのか

「じつは「課題の分離」ができておらず、承認欲求にとらわれている人もまた、きわめて自己中心的なのです。」このフレーズが印象的だった。

p. 195: 叱ってはいけない、ほめてもいけない

ほめるという行為には「能力のある人が、能力のない人に下す評価」という側面が含まれています。


まさに「ほめること」の背後にある上下関係、縦の関係を象徴しています。人が他者をほめるとき、その目的は「自分よりも能力の劣る相手を操作すること」なのです。そこには感謝も尊敬もありません。


誰かに褒められたいと願うこと。あるいは逆に、他者をほめてやろうとすること。これは対人関係全般を「縦の関係」としてとらえている証拠です。


アドラー心理学ではあらゆる「縦の関係」を否定し、すべての対人関係を「横の関係」とすることを提唱しています。ある意味ここは、アドラー心理学の根本原理だといえるでしょう。


そもそも劣等感とは、縦の関係の中から生じてくる意識です。

ここはアドラー心理学の根本的な部分だった。叱ったり褒めるという段階で縦の関係になるというのはたしかにそうだと思った。

縦の関係を回避するには,感謝や支援というのが重要になる。

p. 206: 自分には価値があると思えるために

ここでは自分に価値を感じて,勇気を持てるようになるためのポイントとして,「人は「わたしは共同体にとって有益なのだ」と思えたときにこそ、自らの価値を実感できる。」という言葉が印象的だった。

他者からの評価ではなく,自らの主観で思えること。これが重要なのだそうだ。家事に務める専業主婦なんかを考えるとこれが重要なのかもしれない。

p. 252: 人はいま、この瞬間から幸せになることができる

「幸福とは、貢献感である」というフレーズが登場した。自分に価値があると思えることの続きの話となっている。

承認欲求に基づく貢献感には自由がないともあった。

この貢献感を得るには,共同体感覚が必要で,自己受容,他者信頼,他者貢献が足りていないという話だった。

結論

自己啓発本らしく読んでいて前向きになる本だった。

青年の質問が読者の疑問を代弁しており,考え方がよくわかった。ただ,こういう対話形式だとあとで見返しにくいので,教科書のように図解されたものがあるといいなと感じた。

過去のことに縛られて,AだからBできないという考え方で,じたばたしている人にはうってつけの本だろうと感じた。

書評☆4: ブチ抜く力 | 確かな積み重ねからくる自信を感じられる想像を超えた内容

概要

  • 書名: ブチ抜く力
  • 副題:
  • 著者: 与沢 翼
  • 出版: 2019-03-10
  • 読了: 2020-03-19 Thu
  • 評価: ☆4
  • URL: https://book.senooken.jp/post/2020/04/05/

評価

ネットニュースで与沢 翼のことをときどき見聞きしていた。以前は胡散臭い人だなと思っていた。

ここ何年かで会社が破産したときき,自分も終わったと思ったのだが,その後復活してダイエットにも成功したときいて興味を持って本書を読んだ。

本書では彼がこれまでやってきた考え方を解説している。

内容は大きく3部に分かれていた。

  1. ぶち抜くという考え方
  2. 投資での考え方
  3. ダイエットの考え方

自分が信じた一つのことを徹底的にやり遂げたり,他の全員の想像以上の成果を挙げることで,上の世界にのし上がることができる。数年前に悪目立ちしていたのも,いい意味でも悪い意味でも目立つことが重要という考えからきていたらしい。

社会人6年目だが,自分が見聞きする成功している人を思い返すとたしかに一つのことで他者より抜きん出ていたり,目立っていたりする人が多かった。

もっとも,一つのことを徹底的にやり抜いたり,他人の想像を超えること自体が難しいのだが…考え方はたしかにそうだなと思った。

また投資での事例があった。そこの話でしっかり勉強してやっているんだと思った。投資家として20代のころから10年以上やってきているのだから,当然といえば当然なのだが。そこからくる自信を文面から感じた。

普通の人はそこに踏み出して勉強するということがなかなかできない。そんなことをするならば自分の仕事の勉強をしたりするから。

お金をたくさん稼いで,お金を稼ぐことを第一に考えて,その後で他のことをやればいいというのもそうなのかもしれない。

思っていたより,まっとうなこと,正論が書かれていて,自分の胸に刺さり,心が揺さぶられた。

引用

p. 83: 与沢翼の父

私の父はスタンフォード大学のMBAを取得し、あなたもご存じの日本の財閥系の上場企業の役員を務めた後、今はその財閥グループの子会社社長になり、先日NHKにも出演していました。

成功している人はその親も成功していることが多いのだが,与沢翼も元々そういう素質がある人間だったようだ。

結論

一つのことを短時間で徹底的にやり抜いて,全員の想像を超える成果を挙げて,一つ上の世界にのし上がる。

これまでのいろいろな取り組みや勉強からくる自信が感じられる内容で,なんだか悔しいがこちらの想像を超える内容だった。

書かれていることももっともらしいことが書かれていた。

ただ,いうのは簡単でも,やるのは難しい。

意識を高めるのには役立つが,結局具体的なことは自分で考えてやらないといけない。

なかなか…

書評☆2: 多動力 | ホリエモンの原液を薄めて作られた本

概要

  • 書名: 多動力
  • 副題:
  • 著者: 堀江 貴文
  • 出版日: 2019-04-10
  • 読了日: 2019-01-15 Wed
  • 評価: ☆2
  • URL: https://book.senooken.jp/post/2020/01/15/

評価

2017-05に出版された同書の文庫本版となっている。巻末に編集者の箕輪厚介による解説がある以外はおそらく同じものだろう。

比較的最近に読んだ「バカとつき合うな」などでこの本がすごいヒットしたと言及されていて興味を持って読んだ。

この本の経緯は,解説にある通り,高城剛が「イーロン・マスクは次から次へと意識がちってしまい,ボタンもとめられない。しかし,そういう次から次に新しいことをやってしまう多動力がこれからの自体は求められる」というツイートが発端となっている。

この多動力を編集者の箕輪厚介の身近の実践者として堀江貴文 (ホリエモン) が抜擢されて本になった。

肝心の内容はホリエモンが普段考えていることや実践していることが書かれているだけだった。他のホリエモンの本や「ゼロ」読めば分かるようなホリエモンらしいことが書いてあるだけだった。

一言でいえば,「身の回りの自分がワクワクするようなことに全力で取り組め」ということだ。特に目新しいことはなかった。

語り口調で200ページ程度で書かれており,内容も小難しいことはなかったのですらすら読み終わってしまった。

結論

いわゆるホリエモンの本だった。ここ何年かで一番のヒット作でマンガやら映画にまで展開されていて少々期待していたのだが,期待はずれだった。

ホリエモンの普段の行動や他の本に書かれている内容のエッセンスを表現を変えて書かれているだけで,特に目新しいことはなかった。

本書の第5章に書かれている通り,ホリエモンの本は原液を薄めて,展開しているだけなんだと感じた。

これ以上ホリエモンのビジネスやモチベーションに関する本を読んでも特に得られるものはなさそうに感じたので,よりピンポイントな内容の本以外は読むのを控えようと感じた。

書評☆3 バカとつき合うな | 堀江 貴文と西野 亮廣が考える「悪いバカ」と「いいバカ」

概要

  • 書名: バカとつき合うな
  • 副題:
  • 著者: 堀江 貴文 and 西野 亮廣
  • 出版日: 2018-10-31
  • 読了日: 2019-09-04 Wed
  • 評価: ☆3
  • パーマリンク: https://book.senooken.jp/post/2019/10/31/

評価

電車内広告で目についたのが記憶に残っており,興味を持って読んだ。

内容は堀江 貴文と西野 亮廣の2名が,それぞれ考えるバカを12個ずつ取り上げ,なぜその行動はバカなのか,どうすればいいのかを述べている。これが書籍の2/3を占めている。

残りの1/3で,両者がお互いのバカなところを指摘しあい,称え合い,最後に自分のバカエピソードを述べ,最後に読者にいいバカになれとメッセージを送っていた。

本書の内容だと,どちらかというと自分は「悪いバカ」に該当するだろうと感じた。

p. 122に西野が挙げた17番目のバカに「善意なら何でもありのバカ」というのがあり,以下の一文がある。

つまり、善というのが、思考停止をする口実になってしまっている。

この本も,結局のところここに近いなと感じた。いわゆるポジショントーク。自分がやってきたこと,考えたこと,実践してきたことを書いてきて,自分の考え・やってきたことを推奨するようなそんな感じの内容だった。

内容的には,共感するような部分もあったが,上記の引用と同じで,注意が必要に感じた。

たしかに,一見すると世の中には理不尽であったり,非合理的なこともあったりする。ただ,その評価が本当に妥当かというとその判断は難しい。

堀江 貴文と西野 亮廣という,多くの人とは異なることをして目立つ2名により書かれている。彼らに興味がある人は,別のところでこの本に書かれているような内容を日頃から彼らから感じ取っているだろう。それがあらためて言語化された内容となっている。

彼らに興味がない人は,彼らがどういう考え方で動いているかが分かるだろう。

結論

堀江 貴文と西野 亮廣の2名,あるいはどちらかに興味があるならば,彼らの考え方をさらに知るグッズ的な意味があるだろう。

基本的には彼らの考えが書かれており,彼らが肯定する考えかが,否定する考え方が書かれている。それらを知って何になるか,役に立つかはわからないが,そういう他人の考え方があるという参考にはなるだろう。

個人的には,共感する部分,なるほどと思う部分はあった。しかし,だから何という感じで,自分の行動が変わるところまではいかなかった。

書評☆2 エンジニアの成長戦略 | 現役技術士による理系の勉強方法指南

概要

技術士事務所の代表である著者による理系技術者全般に対する成長戦略が書かれている。

成長戦略とはあるが,勉強のしかたについて著者の考えが書かれているだけの本の印象を持った。

ところどころに参考文献はあるものの,言葉の言い回しなど何というかあまり重要でない部分での引用が多く,参考文献があってもいまいちな本だった。

参考文献があっても,著者の考えが強いので,この著者を信頼できるなら参考になるだろう。

参考

p. 069: 10年に一度『現代用語の基礎知識』の読破の勧め

現代の様々な分野に関するキーワードの基礎知識のベースが頭のなかに構築される。何か新しい分野の勉強を始める時にそれが役に立つ。

このような本の存在を知らなかった。たしかに,薄く広い知識があると,次回以降にそれに関わる際の理解の速度が劇的に早くなる。著者の主張に同意した。

実際に自分もこの本を読んでみようと思った。

結論

書名が歯切れのよいフレーズだったので期待していた。しかし,内容が著者の独自の考えが書かれているだけで,そこまで客観性はなく,重要な内容がなく感じてしまった。

どこかで著者のセミナーなどを受講して,いいなと思ったならば,読む価値はあるだろうけれど,それ以外の場合,一般的な浅い内容が書かれているのであまり参考にならないように感じた。

ただし,『現代用語の基礎知識』を10年に一度読むというのはいい方法だと思ったので,ここだけ参考にしようと思った。

パーマリンク: https://book.senooken.jp/post/2019/07/05/

書評☆3 勝ち残りSEへの分岐点 | 「たかが履歴書1枚されど履歴書1枚」を充実させるための資格の重要性

概要

SEとして成功していくためのコツが書かれている。

基本的に筆者の経験に基づく内容がほとんどだ。だが,参考になるところがあった。

この筆者の主張で一番印象になったのは,勉強 (資格取得) の重要性だ。資格試験,特にIPAの情報処理技術者試験に関しては,40年もの間多くの人々が効率的にスキルを身につけるための方法論が凝縮されている。したがって,資格試験を取得することは,効率がよいので是非受験しようということだった。

また,たかが履歴書1枚だが,されど履歴書1枚を充実させるために努力するのも大事だなと感じた。

参考

p. 75: 「自分に何ができるか」を正確に把握

Aさん: 私の場合、転職先の会社には、処遇や待遇よりも、自分何が求められているかを具体的に確認しました。そして、自分がそれを提供できるかどうかを考えていから転職しました。このあたりが失敗しなかった大きな要因だと思いますね。


Cさん: そうそう、失敗する人って「次の会社では、何をやらせてもらえるのか」とか、「どんな仕事やポジションが与えられるのか」とか、自分のことばかり聞くよね。


今、この年齢になったら分かるけど、 "(自分が) 何をしたいのか" ではなくて "何ができるか" で転職を考えないと絶対に失敗しますね。他人を満足させることができる人が "プロ" だということを忘れないようにしないと。

自分にこういう視点が欠けていた。

p. 157: プロジェクトマネジメントスキルの習得方法

筆者は、これまでの経験から次のような方法がベストだと考えています。。

  1. PMBOKでプロジェクトを成功させるための方法論 (理論、プロセス) を習得する
  2. 情報処理技術者試験プロジェクトマネージャーの午後Ⅰ/Ⅱ問題を使って、基礎的な状況対応の方法論 (知識) を習得する
  3. 一定の知識/理論が身についた上で、プロジェクトメンバの視点から先輩諸氏のノウハウを盗む。すなわち、他人の経験から学ぶ (理論や基礎知識がないと、そもそも先輩の行動とその狙いが理解できないため、1と2が必要になる)。低レベルの失敗がなくなる
  4. 十分な準備 (123) を経て、プロジェクトマネージャーとしてデビューする。ここで自分の経験をする
  5. 最後に、経験を積んだ上で資格を取得する (プロジェクトマネージャは自分の言葉に説得力を持たせなければならないため、資格は必須)

今までの現場では使えないPMがけっこういた。しかし,PMの勉強方法なんて誰も教えてくれないし,必要になる前に勉強はたしかに必要だ。PMの勉強方法の参考になった。

p. 180: ビジネスマネジメントスキルの習得方法

金融業のシステムを担当するSEのAさんは、中小企業診断士のテキスト (1次) を使って経営に関する知識を身に付けたそうです。残念ながら、まだ資格取得には至っていませんが、経営者と話をする上で大変役に立っているといいます。

中小企業診断士に興味を持った。

結論

勉強の重要性,資格試験の重要性を再認識できた。その他,PMの勉強方法が書いてあって参考になった。

学び続けることが大事だなと感じた。今後も資格試験はどんどん挑戦していこうと思った。

パーマリンク: https://book.senooken.jp/post/2019/06/05/

書評☆3 リーダーにカリスマ性はいらない | 日本HPでのエンジニアあがりのリーダーとしての成功事例紹介

概要

2018年頃の職場で,上司がしょうもない人間ばかりで,よいリーダーとはどういう人間なのか,どうすればいいのかについて調べていたときにみつけた1冊の本だ。

日本ヒューレット・パッカード社 (HP) に1991年から2010年まで20年勤務し,そこでエンジニアあがりのリーダーとして成功した著者による成功事例集が書かれている。

2000年代初頭に,Linuxがこれから商業分野で普及し始めるぞという未明の段階で,HPでLinux事業部のリーダーとして著者が任命された。その中で,著者の行動がどのように成功に導いたかがまとめられている。

図解も取り入れられて読みやすくはあった。ただし,書いている内容が偏っていると感じた。本書で問題に思ったのは以下2点だ。

  1. 前提条件がすでにハイレベル
  2. 体験した成功事例しか書いていない

1点目だ。まず,著者はいわゆる高学歴だ。そして,HP自体も大企業であり,在籍している社員もある程度のエリート揃いだと想像できる。そのような現場で通用するリーダー論というのは,同じようなレベル感の現場でしか通用しないだろう。書いている内容は悪くはないが,適用可能かどうかは別だ。

2点目だ。著者の経験ベースで書かれている。試行錯誤した内容が書かれているが,基本的には自分で実践して成功したことしか書いていない。では,他のリーダー論と比較してどうなのかという観点は一切ない。文献の引用もない。あくまで自分の経験に基づくことだけだ。1点目と関連するが,それはたまたまいろんな事象が組み合わさってうまくいっただけではないのかという疑念が残った。

参考

p. 060 HPの「10ステップ」ビジネスプラン

運のいいことに、当時のHPでは、前者共通のビジネスプラン作成用標準フレームワークが開発されていた。 "Business Planning for Competitive Advantage – The Ten-Step Approach" (通称「10ステップ」) と呼ばれるツールだ。

「10ステップ」では、ビジネスプランの作成手順を10段階 (事業美人の策定、市場分析、競合分析、必要となる製品・サービスの選定、数値目標、組織体制、スケジュール、課題など) に分けており、各ステップごとにツールや例題を活用しながら計画の作成を支援してくれる。

社員がこの10ステップを踏むだけで、効果的にビジネスプランを作成できるというわけだ。

HPの「10ステップ」ビジネスプラン

  1. ミッション・ビジョン
  2. 中期目標 (3カ年あるいは5カ年)
  3. 市場分析 (顧客、パートナー)
  4. 市場分析 (競合)
  5. 商品 (製品およびサービス)
  6. 実行プランと推進体制
  7. 財務分析
  8. 外部の問題と対応策
  9. 内部の問題と対応策
  10. 1年目のブラン

なお、ぼくがHPを退職した2010年時点では、長らく活用されてきた「10ステップ」は役割を終え、違うツールが導入されていたことも念のため追記しておこう。

HP社でのビジネスプラン作成の手順が書かれており参考になった。

結論

書いている内容は悪くなかったし,図解もあり読みやすかった。

ただし,すでに著者が十分恵まれた環境で出した成果に基づいていることには注意したほうがいいだろう。一流企業で成果を上げるのと,底辺どブラック企業で成果を上げるのとでは,意味が全く違う。現場や従業員の室が高い分,前者のほうが圧倒的に簡単だ。

他のリーダー論,特に三流企業でリーダーとして成功したリーダー論など,他のやり方との比較,文献引用などがあるとなおよかった。

パーマリンク: https://book.senooken.jp/post/2019/01/13/

書評☆3 残念な職場 | 大きな組織では、几帳面さや責任感は昇進にマイナスに作用する

概要

今の仕事が面白くなくて,ネットでこちらの記事に興味を持って読んだ。

無能な上司に嘆く社員たち…無責任な人ほど出世する職場の正体 – ライブドアニュース

健康社会学者である著者が,53の研究や600人以上へのインタビューを元に,残念な職場はなぜ発生するのかを解説している。

本文の2/3くらいか残念な職場の発生とそのメカニズムについて解説している。残り1/3程度が残念な職場の改善方法について書かれている。

研究論文や政府の調査結果が随所に引用されており,参考になった。ただ,書籍の内容が残念な職場の分析に終止している感じで,ではどうすればよいのかという解決方法の提案が弱かった。

例えば,長時間労働で睡眠不足だと心筋梗塞のリスクは4.8倍など具体的な数字で書かれている。では,長時間労働や睡眠不足を解消するにはどうすればいいのか?そこが本書では書かれていない。これが残念だった。

参考

p. 41: 出世する人 の特徴 の研究

「大きな組織では、几帳面さや責任感は昇進にマイナスに作用する」というのです。


実はこれ、1984年に経営学者、清水龍螢氏が「わが国大企業の中間管理者とその昇進」と題された論文で使ったもので、「出世を決める要因」をSD法(6段階)で検証した質問項目の一部です。

昔ながらの日本の大企業固有の問題がみえた。

p. 45: 責任感や几帳面さは、昇進にマイナスに作用する

責任感の強さがなぜ、マイナスに作用するのか?

理由の一つは正義感です。

責任感の強い人は正義感も強いため、自らの責任に加え、他者への責任追及も厳しくなりがちです。

これもよくある日本企業での現象だ。

p. 50: チー ターズ ・ハイ

それに拍車をかけるのが、「説得力のある嘘つきほど支配力を持ち、嘘をつくという行為自体が、その人に力を与える」という困った心のメカニズムです (N.E. Dunbar et al. "Empowered by Persuasive Deception: The Effects of Power and Deception on Dominance, Credeibility, and Decision Making" より)。

職場の上司やおえらいさんに高慢な人間が多いのはこのせいなのだろう。確かに,弱気な人よりも嘘でも自信満々な人のほうがなんとなく頼りになる印象をもつ。

p. 138: 男女差

この「女性の悪い特徴」「男性のいい特徴」は、本当なのか?それを確かめようと試みたのがカンター博士です。


その結果、たどりついたのが「数」の重要性です。


職場で男と女の区別がなくなる比率は「6対4」。男社会で女性が占める割合が40%になって初めて男女の分け隔てが消え、個人の資質や能力が正当に評価されます。

別のいい方をすれば、女性が4割を占めれば「女はめんどくさい」と男女の違いを嘆く男性が激減する一方で、女性は「個」の本当の力が試されることになるというわけです。

男女差は数の問題が大きいことがわかった。

結論

残念な職場がなぜ残念になるのか,多数の研究結果やインタビューにより解説されている。メカニズムがわかることで,対応できることもあるだろう。

本書では,具体的な解決策までは解説されていなかった。ここが残念ではあった。しかし,メカニズムがわかることで,どうすればいいか,なぜこうなっているのかがわかり,参考になった。

パーマリンク: https://book.senooken.jp/post/2018/12/17/

書評☆2 どこでも誰とでも働ける | 意識の高い人間による意識の高い現場でだけ役に立つ成功体験が書かれた本

概要

今の仕事が退屈で辛くて,ネットで仕事が退屈なときにどうすればいいか調べていたときにみかけて興味を持って読んだ。

著者の尾原という人は有名人らしい。以下のような立派な経歴の持ち主だった。

  • 京都大学大学院工学研究科応用人工知能講座修了
  • マッキンゼー・アンド・カンパニー
  • NTTドコモ
  • リクルート
  • KLab
  • Google
  • 楽天
  • Fringe81

この本では,意識が高くて立派な経歴をもち勝組人生を謳歌している著者のこれまでの成功事例が紹介されたいわゆるポジショントーク満載な内容となっている。

成功体験しかしていない人間の成功例しか書かれていない本はあまり参考にならないと思っている。

案の定あまり参考にならなかった。だいたい,こういういわゆる意識高い系の実践例などというのは,同じレベルの意識高い人間が周りにいて初めて有効になる。じゃあ,この本の内容をあほな人間しかいないドブラック企業で通用するのかといわれたら,著者はこのような経験がないし,通用しないだろう。

結局,全てポジショントークであり普遍性はない。たまたま最初成功して,その成功が後ろにも継続しているだけだ。

どうせ書くなら,成功体験だけでなく,失敗体験もかいてほしい。成功しか書いていないならば,都合の悪いことを隠しているただの嘘つきと変わりないので,あまり内容も信用できない。

参考

3 グーグルが最高のブレスト相手になる理由

検索キーワードを探す基本動作はグーグル検索ですが、新着コンテンツを中心に見て回るときは、グーグルアラート (https://www.google.co.jp/alerts)が便利です。

グーグルアラートというサービスの存在を知らなかった。エゴサーチしたりするのに便利そうだと思った。

結論

いわゆる意識高い系の人間により書かれたポジショントークだった。人によっては役に立つと思える内容があったかもしれない。例えば,議事録のとり方などだ。

ただ,自分にとってはそこまで有益なものはなく,ときどき読む自己啓発本特有の意識高い文章を読むことになり,うんざりだった。

著者と似たような境遇の人には役に立つかもしれない。しかし,そのような人間は少数であり,結局読んでもなんとなく意識が上がった気がするだけで無駄に終わるだろう。

パーマリンク: https://book.senooken.jp/post/2018/10/25/

書評☆4 自分の頭で考えて動く部下の育て方 | 上司だけでなく,先生と生徒,親と子,先輩と後輩といった全上下関係に適用可能

概要

書名通り,自分の頭で考えて動く部下をどのように育成すればよいかが書かれている。

この本は,「「指示待ち人間」はなぜ生まれるのか? – Togetter」がきっかけで生まれた。

本質的な内容は上記のTogetterにあるので,だいたいを知りたければ,上記で事足りるかもしれない。この書籍では,著者がどのようにしてこんな考え方にたどり着いたのか,また,実際の現場で遭遇する具体的なケースではどう対応すればいいかなど,細かく書かれている。

著者はもともと指示待ち人間を作る側だったが,上司や過去の経験を元に改善してきた。その経験から,ダメな例と良い例,さらになぜダメなのかを解説している。

なんでもかんでも自分で事細かに指示するのではなく,質問しながら,自分の頭を使わせながら,ゆっくりやってもらう。こういうスタンスだったと思う。

上司と部下の関係だけでなく,先生と生徒,親と子,部活動の先輩と後輩といった,組織における上下関係で適用可能な,汎用的な内容だった。

全体的に,ゆったりとおもいやりのある考え方,やり方でよかった。

参考

p. 020: 優秀な人が指示待ち人間をつくる

この節では,著者が幼少時に好んでいた横山光輝の三国志や,その原作である吉川英治の三国志の孔明のエピーソードが書かれていた。

まず,恥ずかしながら三国志を読んだことがなかったので,教養のためにも読んでおきたいと思った。諸葛孔明のような歴史上に残る天才ですら,部下をうまく使えていなかったというのは興味深かった。

p. 034: 山本五十六の名言には続きがある

山本五十六氏の有名な「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」という言葉は、率先垂範の見本のように考えられている。この言葉は、なんらかの技術を教える場合には全くその通りなのだけれども、リーダーと部下の関係に当てはめるのはちょっと違うように思う。

実際には山本五十六氏の言葉には、「話し合い、耳を傾け、承認し、任されやらねば、人は育たず」「やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず」と言葉が続くそうだ。部下の頑張りを全身全霊で承認することが大事だということを、山本氏もちゃんと指摘しているように思う。

山本五十六の名言がかなり本質的なことをついている。

p. 038: 「指示待ち人間」はなぜ生まれるのか?

でも多分、「指示待ち人間」は自分の頭で考えられないのではない。自分の頭で考えて行動したことが、上司の気に入らない結果になって叱られることがあんまり多いものだから、全部指示してもらうことに決めただけなのだ。

これはそう思う。

p. 058: 二、上司は部下より無能で構わない

ライオン使いや象使いは、日常のエサやりや下の世話まで配慮する。考えようによっては、どちらが主人かわからない。肝心の芸をすべき時に芸さえしてくれば、ライオンやゾウの仕事は終了だ。

上司の仕事は部下が持っている潜在能力をできる限り引き出し、仕事の上で発揮してもらうことだ。そのために雑用をこなし、部下が高いパフォーマンスを発揮できるようにお膳立てする。上司の仕事は、部下が仕事をしやすいようにお膳立てする雑用係だ,と言ってもよい。

上司の役割についてかかれている。これもそのとおりで,部下が作業しやすいように,苦心して,部下の意欲を引き出すことに専念すべきだろう。しかし,多くの上司はこれができていない。

p 073: 五、部下のモチベーションをあげようとするなかれ

部下のモチベーションを直接引き上げようとするより、モチベーションを下げてしまう要因を除去することに努力したほうがよい。そうすれば、意欲は勝手に湧いてくる。

モチベーションを上げるのは難しい。であれば,その逆でモチベーションを下げる要因を除去すればいい。こう考えると,行動がしやすい。

p. 126: ソクラテスの産婆術で部下に仮説的思考が身に付く

私が思うに、ソクラテスが歴史に名を残したのは、「無知な人間同士が語り合うことで新しい知を産む」産婆術を得意としたことこそが、本当の理由ではないだろうか。

2012年ごろにハーバード白熱教室でマイケル・サンデルのジャスティスという講義が話題になった。これと同じで,対話的に議論を重ねていくことで,新たな発見をするというもの。これは,とてもおもしろいので,部下と上司のやりとりでも取り込めたらたしかにいいと思った。

p. 205: 部下をほめずに育てる

「ほめて育てる」という言葉がある一方で、「ほめるとつけあがる」という指摘もある。


実は両者はほめるところが違っている。前者は「よく頑張ったね」とか「ここのところ、上手にやったね」と、"工夫や努力、苦労" をほめる。後者は「100点なんてすごいね」「こんな成績、過去に誰も挙げたことがないよ」と本人ではなく、"結果" をほめている。

前者はその人の「内部」に起きたことをほめているのに対し、後者はその人の「外部」で起きた結果をほめている。

これもたしかにそういうのがあると思った。子供の頃にテストでいい成績をとったときのこととかを思い出す。いい成績がとれないとほめられないから,後々だんだんつらくなってきたような記憶がある。

p. 228: ④ 給与の額をどう設定するか問題

報酬で釣ろうとしたら、報酬ばかりに目が行き、肝心の仕事に意識が向かなくなる。これは生物共通の心理なのかもしれない。

仕事を頑張ってほしいなら、仕事自体を面白おかしいものにすることに勝る方法はない。給料で釣ろうという行為は、仕事にインセンティブを与えるというのにはなかなかつながらない。

お金でモチベーションが上がる部分もあるかもしれないが,それだけではなく仕事を面白くすること,それにつながるような福利厚生の改善なども考えていくのがいいのかもしれない。

結論

上司の心構え,やり方など具体的でなぜそうなのかというところがきちんと書かれていてよかった。

書籍の内容的に,名著デール・カーネギーの「人を動かす」の考え方に行き着くところが多いと感じた。

部下を思いやり,意欲を引き出しながら,仕事をしていく。こういう考え方の上司が増えたらいいと思った。すべての上司に読んでもらいたい本だった。

パーマリンク: https://book.senooken.jp/post/2018/08/03/