書評☆1: アメリカ合州国 (朝日文庫) | 同名単行本版への引用に悪意を感じた旅行記

Japanese

概要

  • 書名: アメリカ合州国 (朝日文庫)
  • 副題:
  • 著者: 本多, 勝一
  • ISBN: 9784022608031
  • 出版: 1981-10-20
  • 読了: 2021-04-19 Mon
  • 評価: ☆1
  • URL: https://book.senooken.jp/post/2021/04/19/

評価

本多勝一の書籍 (例: 日本語の作文技術) の凡例の中で,以下の記載があり,これが気になって本書を読んだ。

三 、 The United States of Americaは「ア メリカ合州国」と訳し、「合衆国」と は書きません。(ただし、「合衆国」が誤りだと主張するわけではありません。理由は拙書『アメリカ合州国』〈朝日文庫〉の <あとがき> 参照。)

書籍の本体の内容は,著者のアメリカ旅行記となっている。戦争,人種差別,植民地など著者の根底にある問題意識・思想に基づいたやや結論ありきなインタビュー,旅行記となっている。

個人的に,著者の細かい内容をくだくだ書いて,要点や結論・論点が見えにくい論調と相性が悪いため,軽く眺めて読み飛ばした。

肝心の理由の説明部分は,説明が足りておらず,同名の単行本版の書籍にさらに引用が飛ばされており,怒りを感じた。悪意を感じた。

引用

p. 10: 凡例

三 、 The United States of Americaは「ア メリカ合州国」と訳し、「合衆国」と は書きません。(ただし、「合衆国」が誤りだと主張するわけではありません。理由は拙著単行本『アメリカ合州国』〈朝日新聞社〉の <付録3> 参照。)

本書の後から出版された日本語の作文技術などの凡例と,参照文献が僅かに異なっていた。本書ではなく,本書の前に刊行された単行本版の同名著書に理由が書かれているらしい。

だったら,後の本も最初から単行本を参照するようにしろと怒りを感じた。

p. 287: あとがき

この本のタイトルは「アメリカ合州国」となっていて、黒人を中心にしたルポであるにもかかわらず、タイトルの中に「黒人」に類する言葉が出て来ませんが、その理由はここまで述べてきた文章によって明らかと存じます。つぎに、合衆国でなく合州国とした理由。これはきわめて単純なことであって、The United States of America を全く、そのまま訳せばこうなるからです。改めて「合衆国」を考えてみますと、衆は people に通じ、あたかもさまざまな人民、さまざまな民族がひとつにとけあった理想社会であるかのような誤解を与えます。それが理想または将来の希望的現実であると好意的に解釈もできますが、現在は弱肉強食が "自由" にできる典型的社会であって、強食側にはいいけれど、弱肉側には実に恐ろしい国です。また州によっていかに法律や正確を大きく異にするかは、一度でも合州国国内を旅行した人は痛感したことでしょうから、「合州国」という名は正訳であるのみならず、その実情にもよく合っています。「合衆国」は中国語からの輸入らしく、これについては単行本『アメリカ合州国』(朝日新聞社) の付録に専門学者の検討結果を収録してあります。同書には芝生瑞和氏による解説資料「深南部 –黒人問題の背景」も収録されています。なお加藤秀俊氏も「合州国」の方が実情に合うことを主張されており (『アメリカの思想』NHKブックス)、また鶴見俊輔氏は「北米合州国」を提案されています (『北米体験再考』岩波新書)。

気になっていた理由が書かれていた。「合衆国」という表記はさまざまな人種がとけあった理想社会の印象を受けるが,実際は異なり,直訳の「合州国」とするのが適切だと考えたかららしい。

それよりも,「合衆国」が中国語からの輸入であり,これについての考察が同名の単行本版に収録されていると書かれており,怒りを感じた。わざわざ文献とたどって来たのに,そこに全て書かれていないというのが手間に感じた。大元になるものがあるのならば,最初にその文献を参照すべきだ。

結論

著者の旅行記がまとめられていた本だった。

最初に読んだ日本語の作文技術が良かったので,何か国語的に意味があるのかと思って読んだ。

気になっていた箇所がさらに同名の単行本へ引用が飛ばされており,わざわざたどってきた自分にとっては怒りを感じることだった。

最初から単行本に引用を飛ばしておいてくれれば何冊も経由しなくて済んだ。どうせ単行本版も文庫本版も内容はほぼ同じなのだから。

書籍本体には全く興味がなく,あとがきの引用箇所を目当てに読んだのもあり,悪意を感じたので☆1の評価にした。

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