概要
日本一有名なデータサイエンティストである,大阪ガスのビジネスアナリシスセンター所長の河本薫によるデータ分析組織の成功のコツを解説書となっている。
大阪ガスのデータ分析組織は1990年代後半に誕生し,現在までで約18年経過した。当時は弱小組織であったが,2011年4月に著者が所長に週にんした翌年の2012年には「ビッグデータ」というキーワードが世間の話題になった。当時,データ分析組織を持っている企業は少なかったため,一躍有名になった。
企業において,データ分析組織を根付かせ成功させるためのコツが,著者の経験に基づいて記されている。
内容は,技術的な話というよりかは組織論がメインだった。どうやれば組織がうまくいくか,メンバーのモチベーションを維持できるか,より会社に貢献できるか,そういった視点に基づいて,なぜこれがだめなのか,こういう方法でやればうまくいったといったことが記されている。
そのため,普通の平社員よりかは,ある程度年齢や役職があり,部下や組織をマネジメントしていくような人向けの内容だった。けっこう泥臭くて忍耐強さが求められる内容が多い。
そもそも,大阪ガスにデータ分析組織がある事自体知らず,まして日本で一番有名だっとはまったく知らなかった。
データ分析の仕事は,知的で会社に大きな変革をもたらすことができる可能性があり,若干興味があった。しかし,その内容をみるとかなり地味で忍耐強さが求められる仕事であり,個人的に読んでいて仕事でやるのはつらそうだなと感じてしまった。
チームメンバーのモチベーションや,成長を念頭に置き,組織の文化を非常に重視していることを感じた。優れた組織は,こういうことが大事であるかがわかっている。頭の悪いしょうもない組織はこのあたりの重要性がわかっていないので,多くのリーダークラスの人間にこのあたりのことはわかってほしい。
参考
p. 23: 朝から晩まで部屋に閉じこもっていたりしない
「見つける力」「解く力」「使わせる力」の三つがデータ分析者には不可欠であるというのが、私の持論です。講演などでも必ず、この三つの力について触れるようにしています。詳しくは、私の前著『会社を変える分析の力』(講談社現代新書)をお読みください。
気になるので,ここで参照されている前著も読もうと思った。
p. 57: 第2章 四種類の「人の壁」を乗り越える
一般企業でデータ分析専門組織を機能させる難しさは、どこにあるのか。それを克服するにはどんな努力をすればよいのか。
一言でいうと「人に働きかける壁」でした。具体的には、人の壁は「四種類に分けられる」と私は考えています。
- 事業部門と連携する壁
- 会社の経営に貢献する壁
- 分析組織のメンバーを育てる壁
- モチベーションを維持する壁
一般企業でデータ分析専門組織を機能させるポイントが参考になった。
p. 130: "負け戦"には臨まないことを失敗から学ぶ
どれだけ頑張って分析しても、どれだけ現場の業務を知り尽くしても、どれだけ意思決定プロセスを入念に設計してもうまくいかないときがあります。
私の経験では次の三つのケースがあります。
- 現場担当者の本気度が足りない
- どれだけ頑張っても得られる公課が小さい
- 素晴らしい予測をしても行動できない
データ分析の失敗パターンの参考になった。
p. 134: 3.3 人手不足を外部委託で補う 自分で解くことのこだわりは捨てた
外部に頼む仕事は大きく二つあります。
- 自前でやるより、外部に頼んだほうが効率的にできる仕事
- 自前でやるほうが効率的だが、外部に任せやすい仕事
アウトソーシングを使うコツの参考になった。
結論
データ分析組織を社内で成功させるためのコツが書かれている。けっこうピンポイントな内容であり,読んで意味があるのはある程度役職のあるリーダークラスだろう。
今後,データ分析組織を立ち上げて,会社に変革起こしたい,現在のチームをもっと良くしたいと思う人にとっては,18年の経験を元にした指南は参考になるだろうと感じた。
コメント
[…] 「最強のデータ分析組織」で,データ分析を会社で活かすためには本書を参照するように書いてあって,興味を持って読んだ。 […]