概要
今の仕事が面白くなくて,ネットでこちらの記事に興味を持って読んだ。
健康社会学者である著者が,53の研究や600人以上へのインタビューを元に,残念な職場はなぜ発生するのかを解説している。
本文の2/3くらいか残念な職場の発生とそのメカニズムについて解説している。残り1/3程度が残念な職場の改善方法について書かれている。
研究論文や政府の調査結果が随所に引用されており,参考になった。ただ,書籍の内容が残念な職場の分析に終止している感じで,ではどうすればよいのかという解決方法の提案が弱かった。
例えば,長時間労働で睡眠不足だと心筋梗塞のリスクは4.8倍など具体的な数字で書かれている。では,長時間労働や睡眠不足を解消するにはどうすればいいのか?そこが本書では書かれていない。これが残念だった。
参考
p. 41: 出世する人 の特徴 の研究
「大きな組織では、几帳面さや責任感は昇進にマイナスに作用する」というのです。
実はこれ、1984年に経営学者、清水龍螢氏が「わが国大企業の中間管理者とその昇進」と題された論文で使ったもので、「出世を決める要因」をSD法(6段階)で検証した質問項目の一部です。
昔ながらの日本の大企業固有の問題がみえた。
p. 45: 責任感や几帳面さは、昇進にマイナスに作用する
責任感の強さがなぜ、マイナスに作用するのか?
理由の一つは正義感です。
責任感の強い人は正義感も強いため、自らの責任に加え、他者への責任追及も厳しくなりがちです。
これもよくある日本企業での現象だ。
p. 50: チー ターズ ・ハイ
それに拍車をかけるのが、「説得力のある嘘つきほど支配力を持ち、嘘をつくという行為自体が、その人に力を与える」という困った心のメカニズムです (N.E. Dunbar et al. "Empowered by Persuasive Deception: The Effects of Power and Deception on Dominance, Credeibility, and Decision Making" より)。
職場の上司やおえらいさんに高慢な人間が多いのはこのせいなのだろう。確かに,弱気な人よりも嘘でも自信満々な人のほうがなんとなく頼りになる印象をもつ。
p. 138: 男女差
この「女性の悪い特徴」「男性のいい特徴」は、本当なのか?それを確かめようと試みたのがカンター博士です。
その結果、たどりついたのが「数」の重要性です。
職場で男と女の区別がなくなる比率は「6対4」。男社会で女性が占める割合が40%になって初めて男女の分け隔てが消え、個人の資質や能力が正当に評価されます。
別のいい方をすれば、女性が4割を占めれば「女はめんどくさい」と男女の違いを嘆く男性が激減する一方で、女性は「個」の本当の力が試されることになるというわけです。
男女差は数の問題が大きいことがわかった。
結論
残念な職場がなぜ残念になるのか,多数の研究結果やインタビューにより解説されている。メカニズムがわかることで,対応できることもあるだろう。
本書では,具体的な解決策までは解説されていなかった。ここが残念ではあった。しかし,メカニズムがわかることで,どうすればいいか,なぜこうなっているのかがわかり,参考になった。
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