書評☆4 協力し学び合う日本型組織のつくり方 | 成果主義が成果を出せない3の理由

概要

社内などで協力が得られず悩んでいて読んだ1冊だ。

従来の日本型経営はいい点があった。2000年代に入り,成果主義,競争主義が導入されたものの,社内の人間関係が希薄になり,逆に失敗するようになってきた。こうした背景を受け,従来の日本型経営を見直し,人を活かす経営理念,組織のあり方を論じている。

学者の書いた本なので,堅苦しくてイマイチかなと思ったが,文量も150ページほどとそこまで多くはなく,内容はよかった。

成果主義が失敗する理由,そして年功序列の利点が書かれており,よかった。経営についてあまり良く知らない人は,世界の流行から成果主義が大事で,従来の日本型経営は悪いものだと思う人もいる。そういう間違いを認識できた。

参考

p. 2: 経営理念とは何か

その表現のしかたは様々であるが、全ての見解に一致する点は、①利益を超えた、企業の目的を示したものであり、②そこには価値観が包含されているとみることができる。この2点を踏まえたうえで著者なりの定義をしてみると、経営理念とは「企業の基本的かつ最終的な目的、および企業の存在理由を示した、経営上における意思決定の根本的な拠り所」となると考えられる。

まず冒頭で経営理念とは何かを定義しているのが良かった。

p. 4: 理念の価値側面の効果

したがって企業文化は「企業のほとんどの構成員によって共有され、かっ受け継がれるもので、将来の行動を条件づける」という特徴を備えていることになる。

企業文化が大事とはいわれるが,では企業文化とは何なのかは人によって解釈が曖昧だった。ここで,文化とは何であるかがはっきりと特徴が書かれており,参考になった。

p. 75: 3) 成果主義はなぜ失敗したか

1990年代に鳴り物入りで始まった成果主義ではあるが、現在その評価は低い。少し以前だが日経ビジネスが2009年に行った調査では、69%の企業が成果主義は失敗だったと認めたという。

成果主義はなぜうまくいかないのか。 改めて整理してみよう。一つは、成果主義は結果主義という点にある。企業活動の評価は基本的に結果重視ではあるが、結果を出すための手段が目的化するか否か、あるいは結果をどう評価するかで、活動全体に対する評価が違ってくる。成果主義における評価は、結果がよければ全てよしという選別思想そのものだ。これは明らかに、はじめに査定ありきという悪しき査定主義であり、査定の結果によって個人間に格差が生まれる。選別格差によって同僚は競争相手になる。筆者が当初から、成果主義は「同僚は敵」をつくったといったのはこのためだ。

二つは、成果主義は多大な金銭報酬と共に地位を与えたことだ。金銭の報酬は拝金主義を助長した。本来成果には金銭ではなく名誉を与えるべきである。そして、地位は人間性で決めるべきで、成果を出す「才」に与えてはならない。

三つは、目標管理の達成度で成果を評価した点だ。これでは将来的な目標や創造的な目標は立てられない。なぜなら、(変化の激しい今日の環境では成果が出る保障がないからだ。いきおい、短期間に確実に成果が出る見込があり、実行可能な目標に限定される。目標がレベルの低いものに集中し、挑戦しなくなったといわれるようになったのはこのためである。

成果主義は多くの会社で失敗だったと認められているようだ。そして,その理由が3点に整理されている。1点目が同僚が競争相手になること。2点目が,拝金主義を助長し,成果を出す「才」に地位を与え,人間性を無視したこと。3点目が,目標管理の達成度で成果を評価した点。これにより,目標が短期的に成果の出るレベルの低いものに集中し,挑戦できなくなった。

これは耳が痛い指摘だ。現在所属している会社に見事に当てはまっている。

p. 77: 成果主義の誤りの修正方法

ではどうするか。一言でいえば、はじめによい成果を生むための仕組みゃ動機付けがこなければならないということである。つまり、人々の仕事の質を高めたり、同僚と切瑳琢磨する精神の函養、情報の共有による新しい知織の創造を生むシステムや職場風土をつくることが先決である。個人を成長させつつ、その力を集団の業績に集約する高業績創出システムである。決して、大きい報酬差と選別によって、過大な個人間格差をもたらしてはならない。

成果主義の問題点を修正する方法が書いてある。成果主義の失敗は,過大な個人格差を生むことになる。そのため,仕組みや動機づけを用意しなければ,解決は難しい。

p. 83: 日本型経営の未来がある伊那食品工業

年功制は、職務の蛮化に対応しやすい。日本では人に仕事を合わせる柔軟な職務観をもっており、能力の伸長や適性によって、職務の異動が自由に行われてきた。この異動は年功賃金だからできるのである。アメリ力のような職務給の下では、職務のレベルによって黄金が変わるため、レベルの低い仕事への異動はむずかしい。また、新しい仕事では成果を出すことはむずかしい。今日、環境蛮化は激しく、新しく生まれる職務もあれば、消えていく職務もある。企業は職務の変化に柔軟に対応できなければ衰退するしかない。人々は異動やローテーションによって、新しい職務への対応を迫られる。その日寺、職務のレベルや成果で評価されるなら、新しい職務への挑戦意欲は失われる。年功給はこうした不平を払拭してくれる。

年功制の利点が記されていた。昨今,仕事の流行り廃りがあり,成果主義だと,レベルの低い仕事や,成果を出すのが難しい新しい仕事への挑戦ができない。たしかにそれはそうだ。こうした問題に対処するのに,年功制はありだと感じた。

結論

2000年に入ってから成果主義がもてはやされるようになった。しかし,成果主義では成果が出ないことがわかってきている。この本では,そうした成果主義の問題点や,従来の日本型経営の利点について書かれており,今まで考えつかなかった視点が得られてよかった。

ただ,この問題に対処するには,本書のp. 77にあるとおり,仕組みを変える必要がある。これは,会社の人事部が大旗を振って動かないと対応できないだろう。個人がどうこうできる問題ではない。

会社の人事部やおえらいさんに読ませたい本だった。

パーマリンク: https://book.senooken.jp/post/2019/03/13/

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