書評☆4 基礎から学ぶ Vue.js | リファレンス形式の易しいVue.jsの入門書

概要

Vue.jsの入門書となっている。この本の特徴はリファレンス形式となっているところだ。そのため,必要な部分だけかいつまんで読む使い方ができてよかった。

Vue.jsの実際の開発では,シングルファイルコンポーネント (SFC) を使うことが多いだろう。ただし,SFCはwebpackやらbabelやES2015の機能をふんだんに使ったものであり,けっこうハードルが高い。

Vue.js入門」だと,このあたりがけっこう前提になっており,序盤にこのことが書いてあり,内容が重かった。

一方,本書ではまた,リファレンス形式になっているおかげで,SFC意識しなくても読み進める。もちろん,SFCの解説もあるがそれは書籍の後半であり,Vue.jsの基本機能の後になっている。

その他,Vue.jsとセットで使われるVueXとVue Routerもそれぞれ30ページずつ必要な文量を割いて解説しており,よかった。

逆に,実践的なアプリケーションの事例はあまりなかった。これは書籍内でも意図的にそういう構成にしているとあり,これはこれでありだと思った。

結論

リファレンス形式で全体的に簡単でわかりやすい説明であり,Vue.jsの入門として悪くない1冊だった。

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書評☆4 謙虚なコンサルティング | 支援を実現するための3レベルの人間関係

概要

人を助けるとはどういうことか」,「問いかける技術」に続く,支援に関する本だ。

社会が複雑化するにつれ,クライアントもコンサルタントも問題も解決策もわからなくなってきている。そのため,従来のコンサルティングで問題を解決するのが困難となってきている。これに対して,謙虚なコンサルティングと著者が提言する新しいコンサルティングの形を解説している。

特徴は,人間関係を3のレベルに分類し,このうち個人的な知り合いであるレベル2の関係構築が,複雑な問題で必要であることを主張しており,その事例について紹介している。

他の前半部分で,今回提言した理論の背景や考え方について説明しており,後半からは過去のコンサルティング経験の事例も出しながら,ポイントを解説している。

前著,特に「人を助けるとはどういうことか」の内容がこの本でも関係してくる。

レベル2の関係を念頭に置きながら,やはり謙虚な問いかけによりクライアントと信頼関係を構築し問題解決に取り組む。その場その場で質問を考えたりする必要はあるが,やり方としてはこれ以上のものはないだろうと感じた。

参考

p. 49: 謙虚なコンサルティングはどのように新しいのか

「コンサルティング」という言葉は昔から次のような意味で使われてきた。専門的情報やサービス、診断、処方箋を助言という形で提供しながら、しかし、ほどよい距離感をしっかり保つことによって、「専門家および医者 (あるいはどちらか一方) としての役割を担って支援する」ことである、と。そうした役割は、問題点がはっきりしていて技術で解決できる場合はうまく果たせるかもしれないが、だんだんよい結果を生まなくなってきている。「問題」が何であるかが曖昧で、どんなことをすれば本当に役に立つのか、支援者がわからなくなってきているためである。

このことは本当にそのとおりだ。技術が発達し,世の中が進化・複雑化するに連れて,問題自体とそれに対する適切な解決策が何かわからなくなってきている。この説明で,著者が主張する謙虚なコンサルティングの必要性を納得できた。

p. 64: 人間関係とは何か。信頼する、率直であるとはどういうことか

私たちは、「人間関係」「信頼」「率直さ」という言葉を、深く考えることなく頻繁に使っているーまるで、その意味を理解できない人などいるはずがないと思っているかのように。しかし、これら三つの言葉について定義してほしいと頼んだら、呆気にとられたような顔をされるか、何を今さらと見下した眼差しを向けられゐか、あるいは、尋ねたほうも答えたほうも納得できない、あやふやな定義をされるかのいずれかである。


「人間関係」とは、過去の付き合いに基づいた、互いの未来の行動についての、一連の相互期待へのことである。

もし私があなたの行動のいくらかをほぼ予測でき、'あなたも私の行動の一部を予測できるなヘへら、私はあなたと関係があるということになる。関係が浅い場合は、互いに相手の行動をおぼろげに予想できる程度だが、関係が深い場合には、二人のどちらもが相手の考え方や感じ方や価値観を承知している。


相手の反応の仕方を互いに知っているという感覚に基づく安心感、合意した目標に向かってともに努力しているという安心感である。そういう安心感を、ふつう「信頼」という言葉は意味している。

人間関係や信頼という言葉を知らない人はいないだろう。しかし,本当のところこれらの言葉が何を指すのか自分も考えたことはなかった。著者によるこの定義は的を得ており,なるほどと納得した。

p. 67: 文化的に定義された関係と信頼と率直さのレベル

  • レベルマイナス1 ネガティブな敵対関係、不当な扱い
  • レベル1 認め合うこと、礼儀、取引や専門職としての役割に基づく関係
  • レベル2 固有の存在として認知する
  • レベル3 深い友情、愛情、親密さ

本書でキーとなる人間関係の3のレベルについて解説されていた。一般的な社会ではレベル1の関係であることがほとんどだ。そして,レベル1の関係は,問題とその対策がはっきりとわかっている場合には有効だ。ただし,非常に多くの複雑な問題はレベル2の関係が必要となる。逆に,レベル3は組織では馴れ合いやえこひいきなど問題となることが多い。

結論

理論的なところが腑に落ちて納得できた。

著者の他の本と同じで,結局は謙虚な問いかけによりクライアントとの信頼関係構築が重要という点では同じだが,視点が異なる。

こういった新しい視点を知ることができたのがとてもよかった。

2000年代後半以降の著者の本は読みやすくて,いい本がよかった。

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書評☆2 ITエンジニアが独立して成功する本 | フリーランスITエンジニアの一般事項

概要

書名どおり,ITエンジニアがフリーランスとして働く方法や注意点について書かれている。

案件の配分や体調管理,営業など一般的なことが書かれている。ただし,内容が一般的すぎてあまり参考にならなかった。

サブタイトルに年収2000万円稼ぐとあるが,これは大げさなキャッチコピーだった。

参考

p. 55: 化名刺を同封した封書の開業挨拶。ハガキは捨てても名刺は捨てない

独立開業の挨拶状をハガキで送る人が多いのですが、ここはインパクト勝負です。人と同じことでは自分を売り込めません。できればハガキではなく、封書にして開業挨拶状を送りましょう。そしてその開業挨拶状とともに、名刺を必ず入れておきましょう

なぜかというと、日本人というのは、ハガキは捨てやすいけれども、相手の名前の印刷された名刺というのはなかなか捨てにくいものなのです。

開業挨拶で名刺を送付するのはいいと思った。

結論

フリーランスITエンジニアとして一般的なことが書いてあり,なんとなくどんな感じか知るのにはいいかもしれない。

しかし,内容が一般的すぎてあまり参考にならなかった。業界の仕組み,市場規模など,もう少し,込み入った具体的な話を知りたかった。

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書評☆3 企業文化 [改訂版] | 文化の解読・変化のための手順

概要

企業文化を理解し,うまく制御するための方法を解説している。

組織文化とリーダーシップ」の内容をわかりやすくしたもののように感じた。

文化というのは,組織内で重要であるが,その分析や変革方法についての情報が欠如している。この本では,文化の分析方法や変革方法を具体的な手順を示しており,貴重な資料だと感じた。

参考

p. 21: 文化の3つのレベル

図表2.1 文化の3つのレベル

  1. 文物 (人工物): 目に見える組織構造および手順 (解読が困難)
  2. 標榜されている価値観: 戦略,目標,哲学 (標榜されている根拠)
  3. 背後に潜む基本的仮定: 無意識に当たり前とされている信念,認識,思考および感情 (価値観および行動の源泉)

文物や行動パターンを経験しただけで,その文化について十分知っていることになるのだろうか。それとももっと深いレベルで理解すべきだろうか。もっと深いレベルで理解するためには,組織が価値を置く事柄について質問してみると良い。つまり,なぜこのようなことをするのかを質問してみるのである。

文化の3のレベルが解説されていた。そして,文化を理解するための簡単な質問が提案されていた。会社訪問などで,自社の特徴をアピールしている会社はよくある。なぜこのようなことをするのかを質問するのは悪くないと感じた。

p. 81: あなたの会社の文化を解読する所要時間4時間の演習

  1. 快適な部屋に集合する。
  2. ビジネスの問題点を明確にする (30分間)。
  3. 文化およびその階層構造に関する概念を確認する (15分間)
  4. 文物を特定し,リストアップする (60分間)
  5. 組織の標榜された価値観を特定する (30分間)
  6. 価値観を文物と比較する (60分間)
  7. 共有されている仮定を評価する (45分間)
  8. 次のステップを決める (45分間)

企業文化を解読するための演習が具体的に示されていた。

実際の企業では,文物と標榜されている価値観,背後に潜む基本仮定が矛盾していることがある。つまり,オープンな風土を標榜しながら,実際はそうではないということが往々にしてある。これらの3のレベルを突き合わせていくことで,3の背後に潜む基本仮定を特定し,企業文化を解読できる。

p. 152: 変革チームと変革の手順

  • 手順1 なぜ,変革するのか?
  • 手順2 理想的な将来像とは?
  • 手順3および4 現状の評価と計画
  • 手順5 移行を管理する

企業文化に変革を起こす際の手順が書かれていた。このような重要であるが,どうしたらいいかわからないことにたいして,手順が示されているのがよかった。

結論

企業文化の解読と変革の手順が書かれており,参考になった。

企業文化は重要ではあるが,目に見えにくく,理解しにくいため,取り扱われず,過小評価されがちだ。この本ではその取り扱い方が書かれている。このような本はあまりないので貴重であり参考になる。

具体的な話や,より踏み込んだ話は「組織文化とリーダーシップ」にもあたるとよいだろう。

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書評☆3 弁護士が教える IT契約の教科書 | ユーザー企業が必要以上に損しないための指南

概要

IT契約に詳しい弁護士によるIT契約でよくトラブルになる項目に関する解説書となっている。

賠償責任や工程ごとの契約などITベンダーが用意してくる契約書に対して,どこに注意すればいいかが解説されていた。

全体的に,ユーザー企業の視点に立った契約の考え方が多かった。

ITの仕事をしており,どちらかというとベンダーの視点を知りたかった。あるいは,いわゆるSESでよく耳にする準委任契約の話をもっと知りたかった。

経済産業省のモデル契約の存在を知れたのが大きかった。

参考

p. 19:「適用」「準用」

法律に記されている特定の条文を、 事案に当てはめることを「適用Jという。


これに対して「準用Jとは、 ある事項に対する法律の規定を、 本来とは異なる 場合に適用する場合に、 一部の文言を読み替えるなどして当てはめることを指す。 準用の代表例が、 システム開発の契約でよく用いられる「準委任」だ。「委任J は法律行為を委託する契約形態、「準委任jは法律行為でない事務を委任する場 合の契約形態である。

準委任契約の「準」の意味がわかった。

p. 63: 準委任でもITベンダーは完成責任を負う

第9章でも説明するが、 民法の準委任には、 事務処理の労務に対して報酬が支払われる「履行割合型」と、 事務処理の結果として達成された成果に対して報酬が支払われる「成果完成型」がある。

学習塾講師の講義は「履行割合型」の例だが、システム開発における要件定義などは「成果完成型」の典型だ。システム開発の各工程では、次の工程のインプットとして用いるために、要件定義書などの成果物の作成をITベンダーに委託している。成果物を完成させることが個別契約の目的であり、委託料の支払いの前提となっていることは明らかだ。「準委任は、成果物の完成責任を負わないJという誤解の原因は、「準委任は履行割合型だけ」という誤った捉え方にある。

実際にはシステム開発契約における準委任は、実態に照らせば基本的には全て成果完成型であり、請負と大きな違いはないというのが正しい理解だ(図5・3)。

準委任契約だから,完成の義務はないとよくいわれるが,そうではないことがわかった。もう少しここは調べる必要がありそうだ。

p. 126: 準委任での支払い条件は二つ

しかし、準委任に成果完成型があることは、現行法に明文規定がないために、誤解が生じやすい。そこで今回の改正では、準委任における報酬の支払いについて、「履行割合型」と「成果完成型」の二つのパターンが明記されるようになった(図9・5)

成果完成型に関する規定は、改正法の「第648条の2Jで追加される(図9・6)0I委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合において、その成果が引き渡しを要するときは、報酬は、その成果と引き替えに支払わなければならない」という規定である

具体的な条文が引用されており,参考になった。

p. 267: 経済産業省 策定・公表「情報システム・モデル取引・契約書」

本書で紹介したモデル契約書(経済産業省が2007年4月に策定・公表した「モデル取引・契約書〈第一版>J)の条項部分を抜粋したものを参考資料として掲載する。

経済産業省のWebサイト (http://www.meti.go.jp/policy/it_policyIkeiyaku/)からは、モデル取引・契約書を策定した「情報システムの信頼性向上のための取引慣行・契約に関する研究会Jの報告書や解説つきの契約書をダウンロードできる。実際に活用する場合は、経済産業省がWebサイトで公表しているマスターファイルをダウンロードしてほしい。

経済産業省のモデル契約書のURLが示されていた。

結論

ユーザー企業目線でIT契約の勘所がまとめられていた。

個人的には,ITベンダー目線,その他SESに関する契約の話を詳しく知りたかったので,物足りなかった。

パーマリンク: https://book.senooken.jp/post/2019/05/02/

書評☆2 エンジニアリング組織論への招待 | 不確実性の取扱には確かな裏付けのある方法で対応すべきだろう

概要

ITエンジニア本大賞2019の技術書部門の大賞に選ばれていることに興味を持って読んだ。

ちなみに,ビジネス書部門の大賞の「イシューからはじめよ」も読破し,書評を付けている。

エンジニアリングを使った製品開発をしている企業の組織論が述べられている。IT企業を念頭に置かれているように感じたが,抽象度が高かったので,一般企業にも通用する部分は多かった。

表紙にもあるように,組織での失敗は,不確実性の取扱にあるとして,思考方法,コミュニケーション,マネジメントについて考察されていた。

ただし,自分にとってはあまり有用ではなかった。理由は,大部分が著者の考えだけに依るものだからだ。一部,申し訳程度にデータの引用や他書の引用はある。しかし,本書の大部分はあくまで著者の考えに過ぎない。学術的な理論や根拠に基づいているものではない。そういう意味で,あまり信頼できないと思った。

また,内容がけっこう抽象的で,一般社員が活用できるような内容ではなかった。せいぜいリーダークラスが最後のマネジメントの部分を参考にできるかもしれないという感じだった。

特に,コミュニケーションの部分に関しては,本書よりも「人を助けるとはどういうことか」を読んだほうが効果的だと感じた。

不確実性の取扱が重要とあるのだから,対処方法も著者の考えだけでなく,裏付けのあるより確実性の高い方法で対処すべきだろう

結論

書籍のレイアウトはきれいに組版されており,内容にしては比較的読みやすかった。ただし,その肝心の内容が,いかにもコンサルタントや意識高い系の人間が好きそうな小難しくて,一見もっともらしそうなことがだらだらと書き連ねられている。

これらの内容に,学術的な根拠や裏付けがあるならばまだよかった。しかし実際はあくまで著者の考えに過ぎない。著者を信頼できるならば,意味はあるかもしれないが,そうでなければあまり有用ではないと感じた。

ネット上で過大評価されていると感じた。どこぞのよくわからん人間に新しく書かれたそれらしい意見よりも,多少古くてもしかるべき人間に書かれた信頼できる情報を当たったほうがよいと感じた。

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