書評☆3 How Google Works (ハウ・グーグル・ワークス) | 新時代の知識労働者「スマート・クリエイティブ」のマネジメントが全て

概要

  • 書名: How Google Works (ハウ・グーグル・ワークス)
  • 副題: 私たちの働き方とマネジメント
  • 著者: エリック・シュミット and ジョナサン・ローゼンバーグ and アラン・イーグル
  • 出版日: 2017-09-01
  • 読了日: 2019-10-31 Thu
  • 評価: ☆3
  • URL: https://book.senooken.jp/post/2019/12/12/

評価

2014-10に日本経済新聞出版社から刊行された同名書を文庫化したものとなっている。

内容は,世界的な大企業となったGoogle社の成長の源泉となる働き方について,成功・成長している企業やベンチャーの発達過程をたどるように説明されている。

Googleの考え方,働き方について書かれた貴重な書籍となっている。

書籍内の至るところに,文献や研究の引用があり,ユーモアに富んだ説明があり,さすがというか知性を感じた。

本書全体を通して,「スマート・クリエイティブ」と呼んでいる新しい時代の知識労働者,いわゆる天才のマネジメント方法が書かれている。その中で,Google社の社内制度,戦略なども書かれている。

新しい時代では,プロダクトに根ざしたプラットフォーム戦略が重要というのも至るところで見かけた。

引用

p. 41-44 : スマート・クリエイティブ

ここで,本書全体と通して重要な「スマート・クリエイティブ」という新しい知識労働者の重要性を説いている。

一言でいうと天才なのだが,その最低限の特徴を抜粋すると以下となる。

  • ビジネスセンス
  • 専門知識
  • クリエイティブなエネルギー
  • 自発性

このスマート・クリエイティブを惹きつけ,彼らがとてつもない偉業を成し遂げるられるような環境をつくり出すことが,最高のプロダクトを生み出し続ける能力となる。

いってしまえば,本書はこのスマート・クリエイティブをうまくマネジメントするためにGoogleが試行錯誤して試した方法が書かれている。

p. 53: 楽しいプロジェクト

本書は成功・成長している企業やベンチャーの発達過程をたどるような構成になっている。この発達過程は、雪玉が坂道を転がっていくうちに勢いがつき、どんどん大きくなっていくような、永続的な好循環に発展できるものだ。一連のステップは、スマート・クリエイティブを惹きつけ、意欲を高めるために企業が実践可能なものだ。その一つひとつが企業を次のステップへと押し上げていく。各ステップは相互に依存し、お互いの上に成り立っている。またどのステップも決して終わることのない、ダイナミックなものだ。

ここではGoogleの現在の環境をつくり出したステップが説明されている。

  1. まずは最高のスマート・クリエイティブを惹きつける方法から始める。その出発点は企業文化だ。
  2. 戦略: 事業計画を支える戦略の柱こそが、事業計画そのものよりはるかに重要だとよくわかっている。
  3. 採用
  4. 合意形成の方法: 企業が成長を始めると、難しい判断をくださなければならない時期が来る。
  5. コミュニケーション: 企業の成長に伴って極めて重要に (かつ難しく) なる。
  6. イノベーション: プロダクトの優位性を維持することであり,「イノベーションの原始スープ」に満たされた環境をつくることが唯一の道なのだ。
  7. 従来型企業について
  8. 想像もできないことを想像する方法

特に明示されていないが,暗黙の内に代表・社長もスマート・クリエイティブでないと,こういう考え方はできないだろうと感じた。

p. 88: 独立採算にしない

独立採算制は、各事業部の実績を測るのに都合がよさそうだが、人々の行動を歪めるという好ましくない副作用が生じるリスクがある。つまり事業部の責任者は、自らの事業部の損益を会社全体の損益より重視するようになる。

大企業だと,事業部ごとに独立採算制をとっているところはある。この欠点がわかった。

結論

かのGoogle社の考え方を知れて参考にはなった。が,参考になっただけで,実際に何かに役立てるというのは難しいように感じた。

まず,スマート・クリエイティブを集めたり,関わること自体がそもそも難しい。そんなにどこにでもいるわけではない。

どちらかというと,自分がどうすればスマート・クリエイティブになれるのか,近づけるのか,そちらを知りたかった。

ここに書かれている内容は,スマート・クリエイティブである創業者達が,自分たちと同じようなスマート・クリエイティブ達を集めて,マネジメントするための方法が書かれている。そのため,スマート・クリエイティブでない人間が読んでもあまり意味ないかもしれない。

自分がスマート・クリエイティブに該当していて,スタートアップ企業などでスマート・クリエイティブのマネジメント方法を考える場合には役に立つだろう。ただし,それ以外のほとんどの人にとっては,絵空事になってしまうように感じた。

このような環境を作るには,代表・リーダーがまずスマート・クリエイティブである必要があり,そもそもスマート・クリエイティブ自体が多くないので,届かないだろう。

なお,今回は文庫本で読んだが,ページ数がやや多くて,ページをめくるのが面倒だったので,2014年の単行本のほうが読みやすいのではないかと思った。

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