概要
- 書名: 天才を殺す凡人
- 副題: 職場の人間関係に悩む、すべての人へ
- 著者: 北野 唯我
- 出版日: 2019-01-16
- 読了日: 2020-02-12 Wed
- 評価: ☆3
- URL: https://book.senooken.jp/post/2020/02/18/
評価
2018-02-23に公開された「凡人が、天才を殺すことがある理由。」のブログ記事が書籍になった。電車内広告で見かけており,2019年に勤務していた会社の同僚にお勧めされて興味を持って読んだ。
まえがきにあるとおり,才能を「ビジネスの世界で必要な三つ」に定義し,その才能を活かす方法を段階的に解き明かしている。
内容自体は,ブログ記事を元に天才,秀才,凡人と全てを理解する天才によるベンチャー企業をモチーフにしたストーリー仕立てで進行していく。カリスマ社長の天才,それの右腕の秀才,社長と創業当時からの知り合いの凡人の役割で,凡人視点で物語が進む。
秀才の策略で天才社長が周りに理解されず,社長を助けようと凡人が奔走するも,退任に追い込まれるという話だった。
副題に,「職場の人間関係に悩む、すべての人へ」とあるが,書籍の内容的に周りに理解されない天才とどうにかうまくやる方法を書いているように感じた。
ただ,結局本書の最後では理解できる人間を見つけてアプローチするしかないという,見も蓋もない終わり方をしていて,いまいちだった。
この本の中では,おそらく自分は秀才に該当すると感じており,実社会で周りと全然話が噛み合わず,居づらくなって退場というのを2-3回経験している。
今までを振り返ってなるほどと重なる部分はあった。ただ,どうにかできたかというとそれは無理だと感じた。いつもだが,結局周りの人間次第というのが大きい。成功も失敗も周りの人間との相性が大きい。本書でも「最強の実行者」 (共感性があり,主語が組織の人) にうまくアプローチしたりしていたが,そういう人物に適切なタイミングで出会っていなければ,後の祭りだ。
そういう面で,本書は現象の理解には役立つかもしれないが,現実には何もできないように感じた。
引用
p. 34:人の才能は3種類ある
- 天才: 独創的な考えや着眼点を持ち、人々が思いつかないプロセスで物事を進められる人
- 秀才: 論理的に物事を考え、システムや数字、秩序を大事にし、堅実に物事を進められる人
- 凡人: 勘定やその場を敏感に読み、相手の反応を予測しながら動ける人
なんとなく普段の生活で感じていた分類が明確にかかれていた。
p. 44: 多数決は「天才を殺すナイフ」・大企業でイノベーションが起きない理由
「拡大は『事業KPI』で見られるし、金を生むフェーズは『財務上のKPI』で測るころができる。経営科学の発展によって、プロセスが十分に科学されてきた功績だべ。だどもな、問題は『創造性』や。言い換えれば『天才かどうか』を、測る指標がないことや」 __ 「たしかに創造性は、直接観測できへん。だども、社会からの『反発の量』で間接的にはかることができる」
多数決になると,少数派は不利になるのは当然。
p. 124: 異なる主語を持つ人たち
「天才、秀才、凡人、この三者のコミュニケーションは、『軸』が違うから永久に交わることがない。この話は以前したやろ」
「その理由の根源は『主語の違い』なんやわ」
- 主語を、人メインで語る人。凡人に多い。
- 主語を、組織やルールなどの、善悪で語る人。秀才に多い。
- 主語を、世界や心理など、超越した何かで語る人。天才に多い。
コミュニケーションの軸でなるほどと感じた。
p. 134: 主語を変え、「最強の実行者」を巻き込む瞬間
「でも、結局、なぜ『あなたなら、どうしますか?』がキラークエスチョンなんですか」
「この質問はまさに、主語を変えるためのものやからや。凡人が、秀才を説得できない理由の一つは『主語の違い』や。秀才のほうが組織全体や社会全体が見えているからこそ、凡人の発言というのは、ホンマに『ただの感想』や『意見』に見える。ほんでちょっと、心の中で見下す」
よくあるコミュニケーションのテクニックの一つだった。
結論
話題の本であり,少し期待していた。ある意味期待通りで面白かった。
ただ,よくある自己啓発本と同じで,この本を読んで現実世界の行動で何か変化を起こせるかというと何も起こせないように感じた。
結局のところ,周りの人間との相性次第で,運任せな部分が大きい。メカニズムを理解できたところで,それを役立てることができないならば,特に意味はない。
ただ,内容は面白かったので,教養として読むのがいいと思った。
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