書評☆5: わが投資術 市場は誰に微笑むか | 小型株のバリュー投資は理にかなっている

この投稿には広告リンクがあります。

概要

  • 書名: わが投資術 市場は誰に微笑むか
  • 副題:
  • 著者: 清原 達郎
  • ISBN: 9784065350355
  • 出版: 2024-03-01
  • 読了: 2024-11-08 Fri
  • 評価: ☆5/5
  • URL: https://book.senooken.jp/post/2024/11/17/

評価

cis以上の成果を出した投資家による、投資手法の解説となっている。

PERとネットキャッシュを用いた、バリュー株投資が手法。PERやPBRなど、これらの指標を活用すれば、機械的に上がる銘柄を分析できるのではないか?と思っていたが、まさにその通りの方法だった。

  • ネットキャッシュ=流動資産+投資有価証券*70%-負債
  • ネットキャッシュ比率=ネットキャッシュ/時価総額=(流動資産+投資有価証券*70%-負債)/時価総額
  • キャッシュニュートラルPER=PER*(1-ネットキャッシュ比率)

こキャッシュニュートラルPERで小型株をスクリーニングして、後は社長の熱意などで会社の成長性を見極めて、最低2倍以上の値上がりを期待するというもの。PERでいうと20倍程度くらいまでは期待するというの。

言葉にすると、簡単に見える。自社の資産で株を全部買えるような買ったら無料で会社が手に入るようなことが株式市場ではありえる。そういう会社は利益が出ている限り、資産が増え続けるので、いずれそのような矛盾に市場が気づいて、買い手がついて株価が上がっていくという考え。実に理にかなっている。

バリュー株投資はやったことないので、一度挑戦してみたいと思った。

参考

p. 31: 情報収集に金をかける必要はなし

「何か一つ役に立つ有料の情報源を選べ」と言われたら、私は迷わず東洋経済の「会社四季報」だと堪えます。オンラインのベーシックプランだと月1100円です。


金融のプロならばある程度の知識がないとお客さんの質問にも答えられません。

個人投資家で有益な情報源の紹介でした。

p. 96: 「割安」ってどういう意味?

基本的にはいつでも小型株のポートフォリがファンドのロングポジションの大きな部分を締めていました。

理由は、小型株の多くは基本割安に放置されていて、その中で成長株を見つけて投資できれば爆発的な破壊力になるからです。


会社の価値を評価する基準をvaluationと言います。valuation (評価基準) にはいくつかの方法があってPER (株価収益率) はその代表格です。


PER = 株価/一株あたり当期純利益=時価総額/当期純利益

PERが低いほど、株は「割安」になります。しかし、PERが低くても将来が真っ暗な会社は割安ではないかもしれませんし、逆にPERが高くても成長性が高ければ割安なのかもしれません。


数あるvaluationの方法の中で私が一番重視するのがこのPERですが、このように「将来の利益から割り出した適正なPER」だけで株式の価値を計測することはできません。会社のバランスシート上の資産や借金を含めて計算しないといけないのです。

p. 102: ネットキャッシュ比率

従って、見るべきは会社が赤字になろうがなるまいが同じ値段で売れる資産がどれほどあるかとうことです。それに会社が持っている現金を足して全負債を差っ引いた数字がキーなのです。それがネットキャッシュです。私はネットキャッシュとネットキャッシュ比率をこう定義しています。

  • ネットキャッシュ=流動資産+投資有価証券*70%-負債
  • ネットキャッシュ比率=ネットキャッシュ/時価総額=(流動資産+投資有価証券*70%-負債)/時価総額

投資有価証券に70%を掛けているのは一般的にコストが簿価を大幅に下回っていることが多く、現金化すると税金を払わないといけないからです。いちいち有報 (有価証券報告書) でコストを調べるのも面倒なのでコストを保守的にゼロとして売ったときの税金分30%を引いているのです (大雑把な計算なので税率30%としています)。これで時価総額20億円以上の条件でスクリーニングし、ネットキャッシュ比率で見て数値の高い順に並べます。


我々は、このスクリーニングを数ヶ月に一回やって割安銘柄の候補を探していました。


ネットキャッシュ比率が1なら、お金を借りて時価でその会社の株を全部買うと、借りたお金は会社にある現金や換金可能な流動資産を売って返済できます。つまり、ただで会社が買えるのです。


ここで大型株、中型株、小型株の定義をしておきましょう。これは私の勝手な定義です。

  • 大型株 時価総額3000億円以上
  • 中型株 時価総額500億円以上、3000億円未満
  • 小型株 時価総額500億円未満

p. 105: キャッシュニュートラルPER

同じ将来性の会社があって、一方はネットキャッシュが豊富、もう一方はネットキャッシュがマイナス (つまりデッドネット) だとしたら、当然前者の適正PERは校舎より高くなるはずです。

でもどれくらい? この疑問は、どの会社もネットキャッシュをゼロに揃えて比較すれば解決します。例えば、PERが15倍の会社があるとします。ネットキャッシュ比率0.3倍の場合、仮にネットキャッシュ比率がゼロだと仮定すると (つまりネットキャッシュで今の株価で自社株買いすると)、調整PERは15*(1-0.3)=10.5倍になるわけです。これを「キャッシュニュートラルPER」と呼んでいいかもしれません。財務構造を揃えたPERということです。ほぼ安産できますから楽ですよ。

キャッシュニュートラルPER=PER*(1-ネットキャッシュ比率)


でも、そもそもネットキャッシュがマイナスの会社は我々の投資対象外なので問題になりません。

基本、我々の運用手法はPERとネットキャッシュ比率で割安株を選んで会社の中身を調べて株式を買いますが、キャッシュニュートラルPERを使えばこの2つの指標は1つになります。これが、我々が「割安」「割高」と判定するvaluationです (なお、ネットキャッシュ比率が1以上だと割安過ぎてキャッシュニュートラルPERが定義できません)。

p. 106: キャッシュニュートラルPERの問題点

なお、PERとネットキャッシュ比率で割安株を判断するこの判定方法には2つの問題があります。

一つ目は、投資有価証券以外の「固定資産の価値をまったく無視している」ことです。つまり、土地をたくさん持っていて、それが簿価に比べてとても価値が高いなどの割安銘柄を見逃してしまうことです。

二つ目は、より翁問題である割には見過ごされがちなので気を付ける必要があります。それは企業がゴーイングコンサーン (継続する主体) であり続けるための「設備投資のスケジュール」です。

小型株にはあまり関係ありませんが、


工場建て替えの祭、ネットキャッシュがプラスだった会社が一気にマイナスになる可能性がありますからね。

p. 109: 成長率、金利から適正PERを導く

でも、これだけは覚えておいてください。「今の日本の長期金利を前提にすると、PERが10倍以下の株は総じて信じられないぐらい割安。長期金利 (10年国債の利回り) が3%まで上昇してもまだ十分割安」だということを

p. 116: 割安株を買うと儲かるの?

結論を申し上げれば、「もし割安株を買って儲からないなら、そもそも割安の定義が間違っていた」ということです。逆に (性格には対偶命題で) 言うと、「①割安株に投資すると儲かります]。もちろんすぐ儲かるかどうかはわかりませんが。


ただし、低PERの株は将来の業績予想をするとき、別に増益になる必要がないのです。業績横ばいでも株価が上がる可能性は十分あります。なぜなら、過大な固定資産投資をしなければネットキャッシュが毎年大きく積み上がってくるからです。


だから、正しい「割安」の定義は、「②割安な株の株価が上がらず割安に放置されたままだと時間の経過とともに矛盾がさらに大きくなる」ということかもしれません。そして、その矛盾は無限に大きくなることはなくどこかで解消されていくということなら①と②の命題は一致します。

p. 121: 割安小型株投資の「破壊力」

我々が「小型株」投資に傾注してきた理由は以下のとおりです。

  1. 割安株が多い
  2. 独自のリサーチがしやすい
  3. 機関投資家が持っていない
  4. アナリストがカバーしていない

我々の戦略は割安小型株の中から「割安小型成長株」を探すということです。手間はかかりますが、これが日本の株式市場で一番儲けやすく、しかも大きく儲ける方法です。数は少ないけれど「成長株が割安小型株の中に紛れ込んで」いて、株価がとっても安く放置されていることがあるのです。

p. 124: 小型株が割安である理由

小型株をPERとPBRだけで大型株と比較して割安だと結論づけることはできません。なぜなら、小型株には低PER、低PBRである正当な理由があるからです。

まず挙げられるのがその流動性の低さです。流動性が低いので機関投資家の投資対象になりにくい、従って株価が安い。これは誰にでもわかるでしょう。

しかし、低PER、低PBRで評価されている正当な理由には、他にもまだ可能性としていくつかあります。

  1. 大企業の下請け的な仕事を質て「価格決定力」がない
  2. 参入障壁が低い
  3. 優秀な人材がいない
  4. オーナー経営者の息子 (次期社長) がバカである
  5. 世の中の関心が薄いため経営者が不祥事を起こしやすい
  6. TOBしにくい株主構成になっているので経営者が堕落しやすい
  7. 粉飾決算があった時にダメージが大きい
  8. 海外に進出するだけのリソースがない
  9. 株を相続する時のために (相続税を安くするために)、できるだけ株価は安いほうがいいとオーナー社長思っている
  10. オーナー社長が引退する時に莫大な退職慰労金が支払われることがある

あくまえも可能性の話ですが、こうしたリスクが小型株にはあるのです。


我々は、PER、ネットキャッシュ比率で割安である順に銘柄が出てくるようにスクリーニングを行います (個人投資家の皆さんは、今はそういうスクリーニングはできないかもしれません。しかし、そのうちネット証券のサービスでネットキャッシュ比率、あるいはEV/Ebitd倍率とかも見られるようになると思います)。すると、基本ダメな会社順に並んで出てきます。でも、その中に「この会社ってそんなにダメなの? ちょっと調べてみようか」という会社が何社か出てくるのです。砂の中から砂金を見つけるイメージで。

つまり、いろいろな理由で小型株は安いけど、本来そこまで安くなくてもいい銘柄までまわりにつられて安くなっている、ということです。

p. 128: 小型株の成長性は「経営者」が9割

では、長期的な成長性を見抜くにはどうしたらいいでしょうか? いくつかのポイントを示します。

  1. 経営者がその企業を成長させる強い意志を持っているか (必要条件)
  2. 社長と目標を共有する優秀な部下がいるか
  3. 同じ業界内の競合に押しつぶされないか
  4. その会社のコアコンピテンス (強味) は成長とともにさらに強くなっていくか
  5. 成長によって将来のマーケットを先食いし、潜在的マーケットを縮小させていないか
  6. 経営者の言動が一致しているかどうか

この中で圧倒的に大事なのが1.です。これだけはホームページや社長の発言などで絶対確認すべきです。

p. 220: 株価指数先物の裁定取引残高について

最後にこれまで何度か出てきた、我々が重視しているテクニカルな指標「株価指数先物の裁定取引の残高」について説明します。単純に言うとこうです。

短期筋の投資家が相場に強気で、株価指数先物を大量に買い増すと先物の値段は上がります。通常は現物株にも買いが入るため、先物、現物も同じように上がりますが、たまに先物が勢いよく上がる割には現物株の上がり方が鈍いということが起こります。すると、先物の値段が理論価格より割高になります。

このとき、大手証券会社は自己勘定で「先物売り・現物買い」の裁定取引 (アービトラージ。同じ価値を持つ商品に価格差が生じた場合、割高な商品を空売り、割安な商品を買う) を行います。株価指数先物は現物の値段で3ヵ月で決済されます。ということは現物と先物は3ヵ月ごとに一致するので証券会社はほぼリスクのない裁定取引ができるのです。


裁定取引の「買い残高」(現物株買い・先物売り) が膨らんでくるということは、短期筋が相場に強気で買いまくっているのに対し、長期的な投資家は株式相場にそれほど強気ではないことを示しています。ほどなくして短期筋がそれに気づくとあきらめて先物の買いポジションを閉じることになります。それと同時に裁定取引も終了し、現物株は売られます。

つまり、「先物売り・現物買い」の裁定取引がたまってくると、その後必ず反対売買が起きて現物株が売られますからテクニカル的に「弱気のサイン」となります。逆に「先物買い・現物空売り」のポジションがたまってくると、その後空売った現物株は買い戻されるので「強気のサイン」となります。


この指標が役に立つ理由は「この指標があまりにも不完全であること」にあります。最低残高の報告義務は証券会社にはありません。報告は任意なのです。

p. 262: ようやくわかったショートの勝ち方

ユニクロの後は、ショートは全戦全勝です。ポイントはショート銘柄の「割高さ」だけではなく、出来高急増で表される「過熱感」とショートポジションの買い戻しによる「株価ピークの形成」です。出来高は銘柄によって異なりますが、東証一部で出来高が一番とか二番になるとすごくうれしいですねえ。空売りの機会到来って感じです。

空売りの状況はプライムブローカーに聞くとだいたいわかります。これが、私が個人投資家にショートをオススメしないいちばん重要なポイントでもあります。海外には日本株の大きな貸株市場が存在します。その大きさは日本の信用取引での空売り規模をはるかに上回ります。後で説明するイオン (8267) は、現在これを書いている時点で日本の信用取引の売り残高は158万株です。一方、私がK1ファンドで空売っていた時は海外で3000万株から6000万株が空売られていました。


従って、日本の個人投資家は個別銘柄の空売りにおいてはとても不利な立場にあるわけです。我々は人気が出て出来高急増、株価も高騰した銘柄を「空売りの候補」としてフォローし始めますが、海外での借株の状況の把握に努めます。株価が上がってPERが40倍を超えてきたりすると空売りが増えてきます。この段階では、我々はまだ空売りはしません。空売りが徐々に増えていって株価が上がり続けると、最後には空売っていたヘッジファンドが我慢できずにあきらめて買い戻します。そこが株価のピークになる可能性が高いのです。その買い戻しにショートをぶつけていくのが一番成功の確率が高い方法だと思っています。我々が売ってからさらに空売りの買い戻しが入って株価が上がると怖いので、だいたいショートの残高がピークの半分以下になったところから少しずつ売り始めます。

ユニクロ以降のショートは、すべてこのタイミングを狙いました。従って、海外の借株情報がないと我々はショートができないことになります。

結論

バリュー株投資の解説だった。東大出身で頭が良い著者なのだろう。説明が全て論理的でわかりやすかった。買付け後の売却のタイミングがあまり明記されていなかったのがやや気になるところ。

基本は中長期投資で、中長期的に自信があるから、1年くらいの短期的に逆方向に株価が進んでも自信を持ってホールドしているというところに感銘を受けた。順張りとは考え方が逆で怖くてなかなかできない。

資産を分割するなどして、cisの順張りとバリュー投資どちらも試したいとと思った。

コメント

タイトルとURLをコピーしました