書評☆4 自分の頭で考えて動く部下の育て方 | 上司だけでなく,先生と生徒,親と子,先輩と後輩といった全上下関係に適用可能

概要

書名通り,自分の頭で考えて動く部下をどのように育成すればよいかが書かれている。

この本は,「「指示待ち人間」はなぜ生まれるのか? – Togetter」がきっかけで生まれた。

本質的な内容は上記のTogetterにあるので,だいたいを知りたければ,上記で事足りるかもしれない。この書籍では,著者がどのようにしてこんな考え方にたどり着いたのか,また,実際の現場で遭遇する具体的なケースではどう対応すればいいかなど,細かく書かれている。

著者はもともと指示待ち人間を作る側だったが,上司や過去の経験を元に改善してきた。その経験から,ダメな例と良い例,さらになぜダメなのかを解説している。

なんでもかんでも自分で事細かに指示するのではなく,質問しながら,自分の頭を使わせながら,ゆっくりやってもらう。こういうスタンスだったと思う。

上司と部下の関係だけでなく,先生と生徒,親と子,部活動の先輩と後輩といった,組織における上下関係で適用可能な,汎用的な内容だった。

全体的に,ゆったりとおもいやりのある考え方,やり方でよかった。

参考

p. 020: 優秀な人が指示待ち人間をつくる

この節では,著者が幼少時に好んでいた横山光輝の三国志や,その原作である吉川英治の三国志の孔明のエピーソードが書かれていた。

まず,恥ずかしながら三国志を読んだことがなかったので,教養のためにも読んでおきたいと思った。諸葛孔明のような歴史上に残る天才ですら,部下をうまく使えていなかったというのは興味深かった。

p. 034: 山本五十六の名言には続きがある

山本五十六氏の有名な「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」という言葉は、率先垂範の見本のように考えられている。この言葉は、なんらかの技術を教える場合には全くその通りなのだけれども、リーダーと部下の関係に当てはめるのはちょっと違うように思う。

実際には山本五十六氏の言葉には、「話し合い、耳を傾け、承認し、任されやらねば、人は育たず」「やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず」と言葉が続くそうだ。部下の頑張りを全身全霊で承認することが大事だということを、山本氏もちゃんと指摘しているように思う。

山本五十六の名言がかなり本質的なことをついている。

p. 038: 「指示待ち人間」はなぜ生まれるのか?

でも多分、「指示待ち人間」は自分の頭で考えられないのではない。自分の頭で考えて行動したことが、上司の気に入らない結果になって叱られることがあんまり多いものだから、全部指示してもらうことに決めただけなのだ。

これはそう思う。

p. 058: 二、上司は部下より無能で構わない

ライオン使いや象使いは、日常のエサやりや下の世話まで配慮する。考えようによっては、どちらが主人かわからない。肝心の芸をすべき時に芸さえしてくれば、ライオンやゾウの仕事は終了だ。

上司の仕事は部下が持っている潜在能力をできる限り引き出し、仕事の上で発揮してもらうことだ。そのために雑用をこなし、部下が高いパフォーマンスを発揮できるようにお膳立てする。上司の仕事は、部下が仕事をしやすいようにお膳立てする雑用係だ,と言ってもよい。

上司の役割についてかかれている。これもそのとおりで,部下が作業しやすいように,苦心して,部下の意欲を引き出すことに専念すべきだろう。しかし,多くの上司はこれができていない。

p 073: 五、部下のモチベーションをあげようとするなかれ

部下のモチベーションを直接引き上げようとするより、モチベーションを下げてしまう要因を除去することに努力したほうがよい。そうすれば、意欲は勝手に湧いてくる。

モチベーションを上げるのは難しい。であれば,その逆でモチベーションを下げる要因を除去すればいい。こう考えると,行動がしやすい。

p. 126: ソクラテスの産婆術で部下に仮説的思考が身に付く

私が思うに、ソクラテスが歴史に名を残したのは、「無知な人間同士が語り合うことで新しい知を産む」産婆術を得意としたことこそが、本当の理由ではないだろうか。

2012年ごろにハーバード白熱教室でマイケル・サンデルのジャスティスという講義が話題になった。これと同じで,対話的に議論を重ねていくことで,新たな発見をするというもの。これは,とてもおもしろいので,部下と上司のやりとりでも取り込めたらたしかにいいと思った。

p. 205: 部下をほめずに育てる

「ほめて育てる」という言葉がある一方で、「ほめるとつけあがる」という指摘もある。


実は両者はほめるところが違っている。前者は「よく頑張ったね」とか「ここのところ、上手にやったね」と、"工夫や努力、苦労" をほめる。後者は「100点なんてすごいね」「こんな成績、過去に誰も挙げたことがないよ」と本人ではなく、"結果" をほめている。

前者はその人の「内部」に起きたことをほめているのに対し、後者はその人の「外部」で起きた結果をほめている。

これもたしかにそういうのがあると思った。子供の頃にテストでいい成績をとったときのこととかを思い出す。いい成績がとれないとほめられないから,後々だんだんつらくなってきたような記憶がある。

p. 228: ④ 給与の額をどう設定するか問題

報酬で釣ろうとしたら、報酬ばかりに目が行き、肝心の仕事に意識が向かなくなる。これは生物共通の心理なのかもしれない。

仕事を頑張ってほしいなら、仕事自体を面白おかしいものにすることに勝る方法はない。給料で釣ろうという行為は、仕事にインセンティブを与えるというのにはなかなかつながらない。

お金でモチベーションが上がる部分もあるかもしれないが,それだけではなく仕事を面白くすること,それにつながるような福利厚生の改善なども考えていくのがいいのかもしれない。

結論

上司の心構え,やり方など具体的でなぜそうなのかというところがきちんと書かれていてよかった。

書籍の内容的に,名著デール・カーネギーの「人を動かす」の考え方に行き着くところが多いと感じた。

部下を思いやり,意欲を引き出しながら,仕事をしていく。こういう考え方の上司が増えたらいいと思った。すべての上司に読んでもらいたい本だった。

パーマリンク: https://book.senooken.jp/post/2018/08/03/

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