概要
「人を助けるとはどういうことか」が良かったので,同著の他の本を読み漁っていたときに読んだ一冊だ。
組織文化とリーダーシップについて,著者のシャインが30年以上にも渡るコンサルタント及び研究活動内容が記録されている。
組織における文化にはどういうものがあり,どのように形成されるのかが記されている。
500ページもの文量となっている。しかし,書かれている内容はシャインの活動記録的な面が大きいと感じた。数多くの会社でコンサルテーションを行っており,その事例が細かく書かれていた。ここまではいいのだが,それが多く,そこから導き出される結論がいまいちわかりにくかった。
よくある学術書のだめなパターンの,長く小難しいだけで結局どうすればいいのかがわかりにくかった。学者向けの本だと思った。
参考
p. 27: 文化に伴う3つのレベル
文化の分析のための3つの主要なレベルを表2-1に示した。
表2-1 文化の3つのレベル
- 人工の産物 (artifact)
- 可視的で,触ることができる構造とプロセス
- 観察された行動
- 分析,解釈することは難しい
- 辛抱された心情と価値観 (espoused belief and values)
- 理想像,ゴール,価値観,願望
- イデオロギー (理念)
- 合理化 (rationalization)
- 行動やその他の人工の産物と合致することも,しないこともある
- 基本的な深いところに保たれている前提知識 (assumption)
- 意識されずに当然のものとして抱かれている信条や価値観
- 行動,認知,思考,感情を律する
文化には段階がある。例えば,エジプトのピラミッドなどだ。こういう考え方は目新しかった。
p. 68: 3つの普遍的なサブカルチャー
現場従事者のサブカルチャー
すべての組織には,「スタッフ」に対して「ライン」と呼ばれる人材が存在しており,その組織の製品やサービスを製造し,販売する従業員を指している。
すべての組織における現場従事者の重要な基本的前提知識の一部は表4-1にまとめて表示した。
表4-1 現場従事者 (オペレーター) に伴う前提知識
- 現場における活動は究極的には人材による活動だ。したがってわれわれは不可欠のリソースであり,現場を運営している存在だ
- したがって企業の成功は,われわれの知識,スキル,学習能力,コミットメントに懸かっている
- 求められる知識やスキルは「現場 (local)」に求められる。また組織のコア・テクノロジーと具体的な経験にもとづいて築かれている
- 製造プロセスが以下に注意深く組み立てられ,ルールやルーティン (日常的業績) がいかに注意深く,明確化されていても,われわれはつねに予測不可能な緊急事態に対応しなければならないことをよく理解している
- したがって,われわれは学習し,確信し,不測の事態に対応する能力を身につけなければならない
- ほとんどのオペレーションはプロセス内のさまざまな側面の間の相互依存関係を含んでいる。したがって,われわれは協調的なティームで働く能力を身につけなければならない。そこではコミュニケーション,オープンさ,相互信頼,コミットメントが尊重される
- われわれは,われわれが職務を完遂するために必要とされる適切なリソース,訓練,支援をマネジメントが提供してくれることを期待している。
エンジニア/デザイナーのサブカルチャー
いずれの組織においても,その組織の仕事を下支えするテクノロジーの基本的なデザインの部分を担当するグループが存在しており,このグループがテクノロジーをどのように活用するかについての知識を備えている。
エンジニアのサブカルチャーに伴う基本的前提を表4-2に示した。
表4-2 エンジニアリング・サブカルチャーに伴う前提知識 (グローバルコミュニティー)
- 理想的な世界は,人間による介在なしに精密な機会とプロセスが完璧な正確さと調和の形で機能している世界だ
- 人間が問題の種だ。彼らは間違いを犯すので,狩野な限りシステムに含めない形でデザインを進めるべきだ
- 自然は統治可能だし,統治すべきだ。すなわち「可能なものは実現すべきなのだ」 (前向きの楽天主義)
- ソリューションは化学と入手可能なテクノロジーにもとづいていたものでなければならない
- 本格的な仕事は混乱を解決し,問題を克服することを目指す
- 仕事においては有用な製品と成果物 (アウトカム) を目指すことが求められる
エクゼクティブ (経営幹部層) のサブカルチャー
すべての組織に存在する第3のサブカルチャーは,経営幹部そうのサブカルチャーであり,すべての組織のトップマネジャーは共通の環境と共通の関心を共有しているという事実にもとづいてこのサブカルチャーは築かれている。
この経営幹部のサブカルチャーの要点は表4-3に表示した。
表4-3 エクゼクティブ・サブカルチャーに伴う前提知識 (グローバル・コミュニティー)
- 財務に対するフォーカス
- 財務的な活力と成長なしには,株主や社会に対するリターンは生まれない
- 財務的な活力とは競合企業との永遠の戦いを意味する
- セルフイメージ: 「戦いに備える孤高の英雄」
- 経済環境は永久に競争が続き,敵意に満ちたものである。「戦いにおいては誰も信用することはできない」
- したがってCEOは「孤高の英雄」でなければならない。また全知全能,完全なコントロール,不可欠の存在をアピールしなければならない
- 部下からは信頼できるデータを得ることはできない。何故なら彼らはあなたが聞きたがることしか伝えてくれないからだ。したがってCEOは自らの判断に益々頼らざるをえない (つまり正確なフィードバックが得られないことがリーダーの真実と全知全能の感覚を増強する)
- 組織とマネジメントは本来的に階層的なものだ。つまり階層は地位と成功の尺度であり,コントロール保全のための主要な手段なのだ
- 人材は必要である。しかし彼らは必要悪であって,本質的な価値は備えていない。人材は獲得し,マネジすべきリソースのひとつであり,それ自身が目的とはなりえない
- 問題なく機能しているそきは人材の全人格は必要としていない。彼らが契約している活動をこなしてくれれば十分だ
どの組織にも存在するオペレーター,エンジニア,経営層がどういう文化でどういうことを考えているかがまとまっていて参考になった。
結論
企業文化とリーダーシップという組織における重要なテーマを扱っており,読む前は期待していた。一部,組織における文化について参考になる部分はあった。
しかし,大部分は著者のコンサルテーション録となっている部分があり,だらだらと長く小難しく書かれているだけで,要点がわかりにくかった。文献の引用もたくさんあって,学術資料としてはよいのかもしれない。しかし,一般の人が読むには冗長すぎる。
もう少し一般人向けに内容をかいつまんで,要点を整理してくれたほうが良かった。「人を助けるとはどういうことか」がよかっただけに,期待はずれだった。
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