書評☆3 君たちはどう生きるか | Q. 目の見えない人に赤色とはどんな色かどう説明するか? A. 経験しなくてはわからない

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概要

  • 書名: 君たちはどう生きるか
  • 副題:
  • 著者: 吉野 源三郎
  • 出版日: 2017-08-24
  • 読了日: 2019-09-13 Fri
  • 評価: ☆3
  • パーマリンク: https://book.senooken.jp/post/2019/11/04/

評価

2018年の年末から2019年始め頃にかけて電車内広告でよく目にしていたのが印象に残り気になったので読んだ。

原著は1937年に出版されている。児童文学として,当時の状況を反映して,比較的裕福な家庭に生まれた中学一年生の主人公とその身の回りに起こったことを踏まえて,どのように生きればいいかというのを問うような内容になっている。

物語の展開としては,以下の流れで展開されていた。

  1. 主人公の本田 潤一 (コペル君) の身の回りで起こったできごとを描写
  2. 叔父さんが解説

内容は日常の些細なできごとだった。その中で,いじめや歴史,理不尽,恐怖への対応について取り扱われていた。

戦前から読み伝えられてきたというのは感慨深いものがある。

児童文学としては,悪くはなかったが,なぜそこまで絶賛されたのかがわからなかった。

引用

p. 28 ものの見方について

ここではコペル君が町中に大勢の人がいることを見て,人間は水の分子みたいと考えたところから叔父さんの解説が始まる。

ここでコペルニクスの地動説を引用している。

世の中の多くの人は,大人になるにつれて自分・人間中心の考え方になっていき,今までの常識から離れた視点で物事を考えられなくなってくる。

主人公の眼鏡の坊やがコペル君というあだ名になったのは,今回感じた経験を忘れないように付けたものだった。

地動説を唱えたコペルニクスのように,世の中の常識にとらわれずに,真理を見誤らないようにする。

この大人になるにつれて自分中心の考え方になるというのは,社会人になってそのような考え方の人間が多くいることに気付いて実感する。

p. 56 真実の経験について

同じように、生まれつき目の見えない人には、赤とはどんな色か、なんとしても説明のしようがない。それは、その人の目があいて、実際に赤い色を見たときに、はじめてわかることなんだ。

— こういうことが、人生にはたくさんある。


君自信が生きてみて、そこで感じたさまざまな思いをもとにして、はじめて、そういう偉い人たちの言葉の真実も理解することができるのだ。

ここではクラスの貧しい子でよくからかいの対象になっていた豆腐屋の浦川に対するいじめのできごとについて,叔父さんの解説が始まる。

この件について,コペル君が大きく心を動かされたことを指摘して,経験の重要性を指摘していた。大きく心を動かされた出来事は,なぜ心を動かされたのか,よく考えてみると,本質的なところが見えてくる。

引用した「目の見えない人に赤色とはどんな色かどう説明するか」というのは,けっこう面白い問いだった。例えば,自分の好きなものや問題に思っていることを他の人にどう伝えるのかということに置き換えても考えることができそうだ。

このやりとりが書名である「君たちはどう生きるか」にかかってくる,本書の本質的な部分のように感じた。

p. 183 五、ナポレオンと四人の少年

「もし、黒川なんかが北見くんを殴りそうになったら、僕たちは、僕たちも一緒に殴れっていってやるのさ。なんにもしない北見くんが殴られるなら、僕たちも一緒に殴られてやるって、そういってやるのさ。そうすれば、まさか殴れやしないよ」

ここでは友達の北見くんが生意気だと上級生に目をつけられているという話から,その対応について話があった。

学校なんかでは上級生が下級生に対して偉そうにしているということがよくある。学校だけじゃなく,会社もそうか。

こういう場面にどう対応すればいいか。目の前の理不尽に対してどう対応するかという問題に感じた。中でも,いじめられっこの浦川君が提案したこの意見はいいなと思った。

ここでの約束が,この後それを怖くて履行できなかったコペル君に対してまた問題にはなるのだが…

結論

児童文学として戦前から伝えられてきており,内容も比較的普遍的なものを取り扱っていた。

読み物として,教養として読むにはよかった。しかし,そこまで深堀はされていないため,絶賛される程のものではないとも思った。

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