書評☆4: 順張りスイングトレードの極意 | 30年以上のトレード経験に基づく順張りスイングトレードに重要なボラティリティの考え方,古典から逆張りの使い方まで

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概要

  • 書名: 順張りスイングトレードの極意
  • 副題: 最強トレーダーの知恵からボラティリティブレイクアウト活用術まで!
  • 著者: 荻窪, 禅
  • ISBN: 978-4779126857
  • 出版: 2020-06-10
  • 読了: 2021-03-26 Fri
  • 評価: ☆4
  • URL: https://book.senooken.jp/post/2021/04/18/

評価

スキャルピングは難易度の高い投資手法ということにようやく気づき,スイングトレードの勉強をする必要を感じて,図書館で新し目の本を探していて見つけた本だ。

中期投資のスイングトレードのテクニカル分析を扱った本となっている。

本書の特徴は,30年以上のトレード経験のある著者による,ボラティリティブレイクアウトの説明,及び株式投資における古典の紹介などがあるところだ。

例えば,タートルズや立花義正といった,昔のトレーダーのことが言及されており,経験の浅い自分には新鮮な情報だった。

具体的な部分は,著者の優位性が損なわれることを嫌がって,書かれていなかったものの,基本的な考え方が書かれていた。

特に,大勢順張り,小勢逆張りという考え方が,自分には欠けており,この点は特に勉強になった。

信用残高の使い方などがわかって参考になった。

引用

p. 49-50 タートルズの興亡

1980年代に伝説的なトレーダーであるリチャード・デニスと同僚のウィリアム・エックハートがズブの素人の状態から実験的に養成したトレーダー集団の話が書かれていた。

投資手法の口外禁止のルールを破る者が現れて,うまくいかなくなった。

その投資手法は,過去20日間の高値更新時に買いというもの。しかし,この手法が公になった後は,これを逆手に取った「タートルスープ」と呼ばれる逆指値が入るようになれ,優位性が損なわれたらしい。

タートルズという投資家集団の存在を知らなかったので参考になった。

p. 59-61: 簡単なときに,簡単な銘柄で,簡単に稼ぐ

ボラティリティが高くなるほど難易度が高くなる。ここでは,ボラティリティの指標として以下が紹介されていた。

  • 米国: VIX
  • 日本: 日経VI
  • 欧州: VSTOXX

経験が浅い間は,ボラティリティの高い場面では,手を出さない,あるいはロットを抑えたほうが身のためとなる。

p. 64-65: 「割安株」・「優良株」のワナに気をつける

ここでは,トレード対象としての銘柄の良し悪しの判断において,信用買い残に注意することが書かれていた。

割安株や優良株なのにどうにも需給が悪くて上がらない場合,非常に多くの信用買い残が積み上げられていることが多くある。

現物ホルダーに比べて信用ホルダーは「質の悪いホルダー」といっても過言ではない。信用ホルダーが大量に群がっている銘柄は,需給が悪い。

p. 67-69: 銘柄固定売買のすすめ

ここでは,日本株売買の古典的名著として,立花義正の「あなたも株のプロになれる」が紹介されていた。

この人の手法は,「銘柄固定売買」,つまり1銘柄のみを淡々と売買するというものだった。最初は日本電気,その後はパイオニアに絞って,ひたすら売買していた。

日本株売買の古典的名著を知らなかったので参考になった。

p. 113: 第5章 順張りスイングトレードの秘訣

この章は本書の核となる重要な章となっている。

順張りスイングトレードにおいて,最も重要かつ強力なエントリーポイントとして,ブレイクアウトを取り上げて,投資手法を説明している。

ブレイクアウトは,高値や節目突破などがあるが,この中でも特に著者が取り上げるのは,参加者に気付かれにくいボラティリティブレイクアウトに注目している。

ボラティリティブレイクアウトは,それまでの平均的な価格変動幅を破る動きが出た時に起こるもので,ボリンジャーバンドやATRを使って判断する。

大きく4種類のケースがある。

  1. 横ばいからの上昇
  2. 横ばいからの下落
  3. 上昇からの下落
  4. 下落からの上昇

ボラティリティの判断に有用なATRはAverage True Rangeの略となる。true rangeは一日における値動きの幅のことであり,以下の3種類の内最も大きいものとなる。

  1. 当日の高値から安値までの値幅
  2. 前日の終値から当日の高値までの値幅
  3. 前日の終値から安値までの値幅

こうして算出したATRを3日とか5日など,最大でも30日くらいの任意の期間で平均を取ったものがATRとなる。何日のATRかで数値が異なってくる。

ボラティリティブレイクアウトは,過去の任意の期間のATRの何倍かの値動きが発生した場合に発生する。だいたい1.5-3.0倍ということが多い。

タートルズも下がり初めの損切りラインにもATRを採用しており,世界のスーパートレーダーも非常に重視している指標となる。

ATRという指標を知らなかったので参考になった。

p. 125: 順張りの極意は「上がり始めたら買え。下がり始めたら売れ」

ここでは村上ファンドの村上世彰の「生涯投資家」の書籍に出てくる,父の言葉が紹介されていた。

こちらの書籍は知らなかったので参考になった。

p. 158-161: 失策の「オーバーシュート」を見抜く

ここでは,オーバーシュートへの対処方法が書かれていた。

急騰・急落することがあり,このようなオーバーシュートの発生時には,その後に反動が起こることが多い。

トレンドに逆らわず,順張りでいくのは大原則ながら,このようなオーバーシュートは,逆張りで対処するという柔軟性が非常に重要になる。

公表されている信用評価損益率などで,市場の温度感を測り,タイミングを伺うことが重要になる。

p. 188: わからないからこその「分割売買」

第5章で大勢順張り,小勢逆張りの投資手法を解説していた。これは小刻みな売買になるのだが,ここでは分割売買のすすめを説明していた。

株価が今後どうなるかわからないので,2分割だとか,3分割などで様子を見ながら売買をしていくことで,ギャンブル要素の高くなる一発必中の単発売買よりも,リスクを下げることができる。

結論

順張りスイングトレードを行う上で,重要なポイントが解説されていた。

小難しい内容はなく,わかりやすかった。細かい部分の説明がなかったのは残念だが,スイングトレードの経験の浅い自分には得られるものが多かった。

30年のトレード経験から,自分が生まれる前のトレーダーの情報などもあり,よかった。

2020年12月に具体的な内容が書かれている「順張りスイングトレードの極意」に発刊されているようなので,こちらも読んでみたいと思った。

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