書評☆3 問いかける技術 | 「謙虚に問いかける」は相手を思いやることから始まる

概要

前著である 「人を助けるとはどういうことか」で,
支援関係において重要な役割を果たす控えめな問いかけ (本書での謙虚な問いかけ) に焦点をあてた本となっている。

良好な人間関係を構築するための方法論についての本だ。前著と重複する部分や関連するところはあるが,基本的に内容は独立している。

内容は,謙虚に問いかけるの事例や自分が話す文化に対する著者の懸念,ますますグローバル化する組織における良好な人間関係のコツなどとなっている。

お互いに信頼関係を構築し,何でも気兼ねなく話せる組織にするというのが,Google社などの一流企業では当たり前になっている。これはこうしたシャイン先生達の研究成果を自社に取り込んだ成果でもあるだろう。

謙虚に問いかけるは結局のところ相手を思いやるところから来ている。具体的にどういう問いかけを出せばいいのかというところまでははっきりとは書かれていない。そういう意味で前著と比べると自分にとっては物足りなかった。

参考

p. 17: 謙虚に問いかける (Humble Inquiry) の定義

「謙虚に問いかける」は、相手の警戒心を解くことができる手法であり、自分では答えが見出せないことについて質問する技術であり、その人のことを理解したいという純粋な気持ちをもって関係を築いていくための流儀である。

謙虚な問いかけの定義が書かれていた。

p. 23: 謙虚の意味

謙虚には以下の三つの意味があるので、この言葉を十分に理解するためには、三つを区別して考えると読者の理解が深まるだろう。

  1. 年長者や身分の高い人に接するときに抱く気持ち
  2. 偉業を成し遂げた人を前にして、畏怖の念から生まれる気持ち
  3. その時々で必要な、相手に対してへりくだる気持ち(「今ここで必要な謙虚さ」)。仕事を達成するために、時として私たちは誰かに頼る。そのことによって、私たちはこの種の謙虚な気持ちを持つようになる。

この本で取り扱う「謙虚」の考え方が示されていた。本書では特に3番目の意味を,良好な人間関係の構築の鍵としている。

p. 43: 支援を求めやすい風土は上司の責任

一方で、組織のなかで地位が低いほうの人間は、頼まれもしないのに地位の高い人に対して反対意見を口にしたり手伝いを申し出たりすることは控えたほうがいい、それは相手を侮辱することになる、と感じていることが多い。そうなると、支援を求めやすい風土をつくることは上司の責任になってくる。彼らのほうから部下に力を貸してほしいと言わなければならない。

これは全くその通りだ。

p. 54: 1. 妻のメアリーをお茶に誘う

謙虚に問いかけるが必要な場面としてありがちな事例の紹介だった。仕事が忙しく,相棒のひと休みするような勧めや提案を「悪いけど、忙しいんだ。」といってそっけなく断った。これが悪かった。

この場合は次の3個の選択肢があり得る。

  1. 自分の意思を貫き断る
  2. 提案を受ける
  3. 謙虚に問いかける。少し話そうと提案する。

このような相手を取るか自分を取るかという選択を迫られた場合,二人にとってどうするのがいいかという視点で問題の解決に取り組める。

結論

前著の「人を助けるとはどういうことか」に興味を持ち本書も読んだ。

良好な人間関係を構築する上では,思いやる心が大事だ。そういう意味でデール・カーネギーの名著である「人を動かす」と通じる部分がままあった。

具体的な事例は参考にはなったものの,やはりその場その場で適格な質問を自分で考える必要があり,けっこう難しいなと感じた。前著のように原則としてまとめてあれば参考にしやすかった。

パーマリンク: https://book.senooken.jp/post/2019/02/26/

書評☆4 人を助けるとはどういうことか | 支援関係の失敗の原因はワン・アップとワン・ダウンの不均衡の放置

概要

何回かチームで作業することがあり,メンバーの協力をほとんど得ることができず,よい協力関係を築くためにはどうすればいいか悩んでいて読んだ本の1冊だ。

経営学の組織行動論の分野の権威である著者による,協力関係を築くための原則について書かれている。

サブタイトルに「本当の協力関係をつくる7つの原則」と書かれている。この7の原則は第9章にまとめられている。残りの章は,具体例を元にこれらの原則を導き出すためのプロセスがまとめられているように感じた。

この本を読んで一番印象に残ったのは,支援関係で発生する「ワン・アップ」と「ワン・ダウン」の関係から平等な関係に戻し,信頼関係を築くことが重要だということだ。

まず,支援の依頼者と支援者は,依頼者が下手であり支援者は上手の立場に自然となる。依頼者にとっては,支援者頼みになってしまい,問題を自分で考えないということにもなり,支援者は独りよがりな支援になりがちだ。この依頼者と支援者の立場は質問者と回答者という立場にもそのまま当てはまる。一般的には質問者の立場が低く,回答者の立場が高いからだ。

信頼関係が築けなければ,素晴らしい意見を出しても受け入れられない。

そこで,本書では質問を通して依頼者や支援者と必要な情報を交換して,信頼関係を築くことが,協力関係を成功させる上で重要な点とのことだ。

例えば,道を尋ねられたとき,即座に回答せずに目的地はどこかという問いをこちらから一度投げかける。そうすることで,よりよい回答ができる。質問に対して質問で返すというので,マナー的にどうなのかという疑問は感じたが,本質的なところに迫るには必要なことなのだろうと感じた。

質問の仕方としては大きく4種類存在する。

  1. 純粋な問いかけ
  2. 診断的な問いかけ
  3. 対決的な問いかけ
  4. プロセス指向型の問いかけ

この中では特に1.. 純粋な問いかけが重要だ。相手の感情を刺激せず,何があったのか,どうしたのか,どうしたいのかなど淡々と質問する。これにより,不足していた必要な情報を得,また質問により依頼者の立場を高める。これにより信頼関係を構築する。様子を見ながら,残りの質問を行っていく。

その保管も成果を上げるチームワークの作り方など,組織におけるリーダーや幹部にはぜひとも押さえてほしい項目が具体的に書かれていた。

参考

p. 048: 信頼の要素

要するに、信頼には社会経済から由来する二つの要素がある。他人を信じるとは、次の二つを意味する。

  1. その人間との関係の中で、自分がどんな価値を主張しても、理解され、受け入れてもらえること
  2. 相手が自分を利用したり、打ち明けた情報を自分の不利になるように用いたりしないと思うこと

信頼とはどういうことかがわかった。

p. 069: ワン・アップとワン・ダウン

要するに、そもそもどんな支援関係も対等な状態にはない。クライアントは一段低い位置 (ワン・アップ) にいるため、力が弱く、支援者は一段高い位置 (ワン・アップ) にいるため、強力である。支援のプロセスで物事がうまくいかなくなる原因の大半は、当初から存在するこの不均衡を認めず、対処しないせいだ。

これは無意識の内に感じていたが,確かにそうだ。誰かに何かを依頼すると,なんとなくこちらが下手になり,あちらが上手になる。これを放置してしまうことが問題だということに気付かされた。

p. 120: 問いかけの形を選択する

問いかけとは、具体的な行動と同じような態度である。これがどう運ぶかは、実際の状況にかなり左右される。しかし、問いかけの方法が異なれば、結果も異なったものとなる。そこで、支援者を目指す人はどのような問いかけをするかをきちんと選択しなければならない。プロセス.コンサルタントの役割をする支援者でも、その役割をどう演じるかの選択肢がある。次の基本的な四種類に分けて問いかけを考えると、非常に有益だろう。

  1. 純粋な問いかけ – クライアントの話だけに集中するもの
  2. 診断的な問いかけ – 感情や、原因分析、行動の代替案を引き出すもの
  3. 対決的な問いかけ – 現状について支援者自身の見解をもたらすもの
  4. プロセス指向型の問いかけ – クライアントに支援者との即座の相互関係に専念させるもの

支援においては問いかけが極めて重要な役割を果たす。その問いかけの種類と内容,タイミングなどがかなり詳しく書いてあった。ひとまず純粋な問いかけを意識して,信頼関係が構築できてきたら残りの問いかけを行うようなイメージでやれば,よさそうだ。

p. 179: 成果をあげるチームワークの作り方

どんな支援の状況でも、始めのうち、リーダーはプロセス・コンサルタントとして機能しなければならない。そしてメンバーが次の問題について安心感が得られるような状況を作り出すべきである。

  1. 私はどんな人間になればいいのか。このグループでの私の役割は何か。
  2. このグループで、私はどれくらいのコントロール、あるいは影響を及ぼすことになる か 。
  3. このグループで、私は自分の目標、あるいは要求を果たすことができるか。
  4. このグループで、人々はどれくらい親しくなるだろうか。

よいチームワークを構築する上で重要な観点がまとまっていた。

p. 193: フィードバックという支援

まずフィードバックを有益なものとするため、支援関係に不可欠だとして本書で定義された、相互関係のいくつかの基本ルールに従わねばならない。


そうしたフィードバックは次のような条件で、最良の状態で働くだろう。

強要されるのではなく、自ら求めたもので、具体的かつ明確であり、共通の目標に適合していて、評価的なものというよりは説明的なものである場合、ということだ。

チームワークの構築の中でも重要なフィードバックの条件が参考になった。

p. 229: 支援関係における7つの原則とコツ

  1. 与える側も受け入れる側も用意ができているときに、効果的な支援が生じる。
  2. 支援関係が公平なものだとみなされたとき、効果的な支援が産まれる。
  3. 支援者が適切な支援の役割を果たしているとき、支援は効果的に行われる。
  4. あなたの言動の全てが、人間関係の将来を決定づける介入である。
  5. 効果的な支援は純粋な問いかけとともに始まる。
  6. 問題を抱えている当事者はクライアントである。
  7. すべての答えを得ることはできない。

支援関係における原則とコツがまとまっていた。

結論

支援関係を構築する上で重要な情報がまとまっており,よい本だった。理論だけではなく,具体的な事例も豊富に書かれており,実践的だった。

特に,ワン・アップ,ワン・ダウンと質問に関する話がよかった。チームリーダーや幹部となる人には是非呼んでいただきたい。

この手の本だと,ある程度権力のある人にしか実践できなくて意味がないものが多い。しかし,この本の内容は日常生活にも十分活用できる内容となっている。そこがよかった。今後の日々の生活でも謙虚な質問を軸に心がけようと思った。

本書における問いかけ (控えめな問いかけ,謙虚に問いかける) は重要な項目であり,この部分だけを取り扱った「問いかける技術」もこの本の続編的位置づけで出版されている。この本や著者のシャイン先生に興味を持たれたら読むとよいかもしれない。

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書評☆3 Nuxt.jsビギナーズガイド | ビギナーズガイドとはあるが,経験者向けな内容

概要

Vue.jsベースのフレームワークであるNuxt.jsによるシングルページアプリケーション (SPA) の開発手順を解説していた。

サンプルアプリケーション開発を通じて,Nuxt.jsの使い方などを解説していた。

サンプルアプリケーション開発は大きく3個あった。この内,初心者向けなのは最初の1個だけであり,残りはどちらかというとVue.jsやSPA開発経験者向けだった。

実践的な内容はあったと思うが,自分には若干内容が難しかった。素直に,Vue.jsの入門書で標準的な開発の流れを押さえてから取り組むべきだった。

結論

ページ数が200ページとそこまで多くなく,読みやすかった。ただし,どちらかというとVue.jsの経験者向けのないようなので,先にVue.jsの入門をこなしてから当たると良いと思った。

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書評☆3 躍進するコンテンツ、淘汰されるメディア | Netflixの躍進とそれを取り巻くテレビ,通信,メディアのこれまでと展望

概要

KADOKAWA会長の角川歴彦による「メディアの興亡」三部作の第三部となる。

内容は,動画配信業者として躍進するNetflixをメインに,これまでの日本のテレビ,通信,メディア,それとApple,Google,Amazonのメディア関係の取り組みを振り返り,今後の展望について書かれていた。

Amazon.co.jpで「マストドン」のキーワードで検索してヒットしたので,Mastodonについてどう言及されているのか気になって読んだ。

しかし,本文中にはMastodonや分散SNSの話題は一切ない。おそらく,この本の出版を記念した以下のセミナーと連動して,専用のMastodonサーバーが設置されたので,ヒットしたのだろう。

INIAD坂村健×KADOKAWA角川歴彦が語るコンテンツとIoTの「再定義」 – 週刊アスキー

例えば,AmazonのKindleの失敗,Google TV,iTVの失敗などを上げて,既存のテレビ事業の体制の古さやデバイス戦略の成功・失敗など,著者の洞察が述べられており参考になる部分はあった。

参考

p. 18: ネットフリックスの登場

それでは、動画配信のモノポリー者となるネットフリックスとは、どのような会社なのだろうか。もともと彼らはレンタルビデオ会社からスタートした。1997年に創業したが、顧客の家にDVDを宅配するという新しい発想でなかなかの人気が出てレンタルビデオの大手になった。

ネットフリックスがどのように登場してきたのかがわかった。

p. 30: 前駆者のHuluとの違い

彼ら以前にも動画配信業者はいくつか存在した。Huluはその一つである。だが,先行者は映画会社やテレビ局のサービスの一環として補完的役割を担って創業した。だから伝統的なメディアとは友好的な関係を結びその意に反するような改革はしない。

Netflixと既存動画配信業者との違いが説明されていた。

p. 192: 成長産業などない。経営の良し悪しは経営者の双肩にかかっている

セオドア・レビットは事業衰退の原因は経営の失敗にあるとし、その例としてアメリカの鉄道会社のケースを挙げている。

「鉄道が衰退したのは、旅客と貨物輸送の需要が減ったためではない。それらの需要は依然として増え続けている。鉄道会社が危機に見舞われているのは、鉄道以外の手段に顧客を奪われたからでもない。鉄道会社がそうした需要を満たすことを放棄したからなのだ。鉄道会社は自社の事業を輸送事業ではなく、鉄道事業と考えたために、顧客を他に追いやってしまったのである。事業の定義を誤った理由は、輸送を目的と考えず、鉄道を目的と考えたことにある。顧客中心ではなく、製品中心に考えてしまったのだ」

事業の衰退の原因が何なのか参考になった。

p. 202: モノポリー者の脅威

モノポリー者の脅威の実態を僕に余すところなく伝えてくれたのは、MITメディアラボ所長の伊藤穰一君だ (『グーグル、アップルに負けない著作権法』)。

「モノポリー者というのは、ちょっとした権利をいかにレバレッジにしようかと一所懸命、上手に考えている人たちばかりです。

アップルのデバイスの中には、アップルのものではない特許がたくさん入っている。でもアップルが凄いのは、彼らが一番設けている。なぜかというと、ブランドとエコシステムのコントロールを牛耳っているから。


みんな視点が間違っていると思うけど、クラウドの世界、時代になると、強者は物や権利を持っている人たちじゃないんだよね、YouTubeみたいに、トラフィックとブランドを持っている人が強い。


今の世の中というのは、いかにプラットフォームを作るか、ディストリビューションを持つか、ユーザを持つか、そういうところに力が移っちゃっている。

モノポリー者の考え方が少しわかった。

結論

メディア産業で50年以上勤めている著者による,ここ10-20年のメディア大再編について,洞察と展望が述べられていた。メディア産業に勤めているものには参考になるところがあるかもしれない。

ただし,けっこう細かい内容もある。例えば,NHKとかNTTの通信や放送に関する国とのやりとりや歴史の話など。このあたりはあまり面白くなかった。

個人的にはMastodonに関する記述がなかったのが残念だった。

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書評☆3 日経PC21 2017年7月号 | Mastodonの簡単な紹介とWindows 10の高速化

概要

分散SNSのMastodonへの言及があることに興味を持って読んだ。

肝心の内容はp. 7で武者 良太によりMastodonの簡単な紹介が1ページ書かれていただけだった。2017-05-24発売のため,ブームの1か月後,いろんなサーバーが立って運営が始まりだした頃の記事となる。

具体的なサーバーとして以下の2サーバーが紹介されていた。エイト・オブ・トライアングルのサーバーはもう閉鎖してしまったようだが,知らなかったので参考になった。

  • 東映のバーチャルアイドルユニット「エイト・オブ・トライアングル」のサーバー
  • 中高年の男性が情報交換する「オジ旅クラブ」

その他,Androidのアプリとして以下の3アプリが記載されていた。

  • Pawoo (Android, iOS)
  • Amaroq for Mastodon (iOS)
  • Mastodon-iOS (iOS)

今号はWindows 10のカスタマイズ方法が特集だった。Windows 10はあまり使っておらず,どのようなカスタマイズができるのか知らないことが多かった。

特に,p. 24で記載されていたShift+ドラッグでタスクバーのアイコンにドロップで,ドロップしたアイコンのプログラムでファイルを開く機能は便利そうだと感じた。

結論

Mastodonの情報を目当てに読んだが,こちらは1ページだけで本当に簡単な紹介だけだった。

メインのWindows 10の特集は知らないことだらけだったので,いろいろ参考になった。Windows 10は今後もずっと使われていくので,この情報を参考に快適に使えるようにすると良いと思った。

パーマリンク: https://book.senooken.jp/post/2019/02/12/

[wpap service=”rakuten-books” type=”detail” id=”4910071750772″ title=”日経 PC 21 (ピーシーニジュウイチ) 2017年 07月号 [雑誌]”]

書評☆2 ヒトはなぜ協力するのか | 人が協力するのは元々そういう性質だから

概要

職場で同僚からの協力が得られなくて悩んでおり,どうすれば協力を仰げるか探していてあたった内の1冊だ。

「人はなぜ協力するのか」という問いを検証するための研究成果などの紹介・考察となっている。

翻訳本であり,しかも学術よりな内容のため,読みにくかった。文量自体は160ページ程度と多くはないのだが,堅苦しい論調と結局結論が見えない論理展開で何がいいたいのかわかりにくかった。

書名で掲げられている問いに対しては,冒頭での幼児に対する協力行動の実験が物語っている。それは,人は元々協力する性質を持っているから。社会性が身についておらず,言語の理解もままならない生後間もない幼児に対する実験の時点で,困っている人を助けるような協力行動があったので,結局これが言いたかったことなのだろうと思った。

ただし,こちらが求めていた「どうすれば他人に協力行動を仰げるか」についてはほぼ何も参考になることがなかった。読みにくい論調を我慢して読んだかいがなかった。

結論

心理学の研究者にとっては,論文の引用などがあり参考になるのかもしれない。それ以外の一般人には,読みにくい内容の割に得られるものが少ないので,オススメしない。

パーマリンク: https://book.senooken.jp/post/2019/02/09/

書評☆3 日経Linux 2018年9月号 | 2019-02-08時点で唯一のPleromaの記事とAIスピーカーの自作方法解説

概要

今号の特集は「Linuxサーバー最新レシピ16本:」と「ラズパイで作るAIスピーカー」だ。その他,付録としてUbuntu 18.04LTS対応最新Linux基礎知識本が付属する。

今回はこの特集の中で組まれている分散SNSのPleromaに観する記事を目当てで読んだ。今号の発売当時に以下のURLでそのアナウンスがあったのがきっかけだ。

肝心の記事は,p. 47-48の2ページにわたって,中島能和によりPleromaのインストール方法が解説されている。

APTによる必要なソフトのインストール,nginxなどのサーバー設定などが淡々と書かれており,これだけでインストールできるなら簡単そうだなと感じた。

その他,IoT関係の話題として,Google HomeやAmazon Echoのようなスマートスピーカーを,提供元のAPIを使うことでラズパイで自作しようという12ページの特集が興味深かった。

APIを使うだけでなく,IFTTTを使ったTwitterとの連携もあり,実用的な内容だった。

結論

2018-02-04時点では唯一商業誌で分散SNSのPleromaに言及されている貴重な書籍だった。Pleromaの記事自体は2ページであり,簡単なものだった。今後別の書籍で踏み込んだ内容を期待したい。

その他,IoT関係の話題のスマートスピーカーの自作も,実用的な内容で興味深かった。

自分にはあまり興味なかったが,付録もついておりお買い得な号だと感じた。

パーマリンク: https://book.senooken.jp/post/2019/02/08/

[wpap service=”rakuten-books” type=”detail” id=”4910071930983″ title=”日経 Linux (リナックス) 2018年 09月号 [雑誌]”]

書評☆3 日経Linux 2017年7月号 | Mastodonのインストールとラズパイ+LINE連携

概要

今号では旬なサーバーの作り方として,特集で分散SNSのMastodonのインストール方法の解説があり,これを目当てで読んだ。

元々はMastodonの記事を目当てに読んだのだが,結果としてはMastodonよりもIoT関係の話が面白かった。

MastodonはDockerでのインストール方法を解説されていたが,本当にそれだけで,ふーんという感じだった。

一方,IoTの話題だと今まで余り見ていなかったLINEとの連携について書いてあり目新しかった。

参考

「特集1 旬なサーバーの作り方10選」の「Part 2 インターネットに公開する」でp. 27-29の3ページにわたって,ライター末安 泰三によるDockerを使ったMastodonのインストール方法が解説されていた。

コマンドや設定が手短に説明されており,これだけでインストールできるならば,簡単そうだなと思った。

その他,「Part 5 IoTを実現する」でp. 53-55の3ページにわたって,ラズパイからLINEを使ってエアコンを制御する方法が解説されていた。LINEとの連携はあまりきいたことがなかったので目新しかった。

その他,p. 91からの特別企画「ラズパイで簡単クラウド連携」でGoogle スプレッドシートやLINEと連携していてここも参考になった。

結論

本書は2017-06-08発行であり,2017-04に起きたMastodonブームからすると,Mastodonのインストール方法を解説した本としてはかなり初期の部類に入ると思われる。

内容はDockerのコマンドが羅列されているだけで,あまり目新しくはなく,本当にこれだけでインストールできるのか疑問ではあった。Mastodonの文献として貴重な資料ではあった。

その他,IoT関係でLINEとの連携があり,個人的にはこちらのほうが興味深かった。LINEとの連携はあまり書かれておらず,参考になった。

パーマリンク: https://book.senooken.jp/post/2019/02/07/

[wpap service=”rakuten-books” type=”detail” id=”4910071930778″ title=”日経 Linux (リナックス) 2017年 07月号 [雑誌]”]

書評☆4 マストドン | Mastodonブーム概論から既存SNSとの対比,企業インタビューまで,今でも有効な分散SNSについての議論あれこれ

概要

2017-06-30に発刊された分散SNSのMastodonについて書かれた本だ。5人の著者によるオムニバス形式の内容となっている。内容は大きく以下の通りだった。

  1. Mastodonブーム概論
  2. 近年のSNSの流行り廃りからみたMastodon
  3. 日産がMastodonに参加した理由
  4. Pawoo運営元のpixivへのインタビュー
  5. 分散SNSの可能性

2017-04に起きたMastodonブームの流れと,分散SNSの背景。さらに,近年のSNSの流れから,当事者として参加した企業へのインタビュー,既存SNSとの違いと利点など,Mastodonについて考えられる一通りのテーマが網羅されていた。

特に日産とpixivへのインタビューが入っているのが良かった。

いまだに議論されている内容もあり,考え方として参考になった。

参考

p. 38: Mastodonのプロトコル

実はOStatusにも起源があり、「OpenMicroBlogσqing」というオープンプロトコルがそれに当たります。これはもともと、エヴァン・プロドロモウという技術者が2007年に開発した、「Laconica」というオープンソースのマイクロブログソフトウェア(後に「StatusNet」、さらに「GNU Social」と変遷)で採用されていたもの。

プロドロモウ氏は翌2008年7月に、これをべースとした「ldenti.ca」というツイッター風のマイクロブログサービスを立ち上げました。しかし残念ながら、継続的にユーザーと資金を集めることができず、2012年12月にユーザー受付を終了しています。

Mastodonが当初採用していた通信プロトコルであるOStatusの変遷がまとめられており参考になった。

p. 52: Mastodonの課題

最初の懸念は「犯罪への利用」です。これはマストドン特有の問題というわけではなく、人々のコミュニケーションが発生するツールにとって、避けては通れないポイントです。


2番目の懸念点は、「違法なコミュニケーションの氾濫」です。つまり麻薬の取引や売春など、違法行為に関する情報(時には違法な情報そのもの)を交換する場として、マストドンが活用されるのではないかという指摘です。大手SNSの場合、そうした情報がやり取りされているとなれば大きな批判にさらされますから、多くの予算や人員を投入してパトロールしていることが普通です。しかし誰でも立ち上げられるマストドンの場合、個人が大手SNS並みのパトロールを実施することは難しいですし、そもそも世間では「違法」とされる情報やコンテンツを交換することを目的として、インスタンスが開設されるかもしれません。


第3の課題は、技術面に関する問題です。これも技術、特にデジタルテクノロジーに関しては避けて通れないポイントなのですが、マストドンというソフトウェアが抱える問題点について、指摘する声が大きくなっています。

その一つが、セキュリティ面での懸念です。

Mastodonの課題について考察されていた。仮想通貨もそうだが,自由に使えるソフトは犯罪に使われることが多い。Mastodon登場当初からこのような考察があり参考になった。

p.78: 大事なのはツールではなく場

「マストドン」がよかったのは、繰り返しになりますが、ツイッタークローンのようなユーザーインターフェースを持っていたことです。だからこそ日本ではすんなりと受け入れられたのだと思います。もともと日本はッイッターユーザーが多い国ですから。

そういう意味では「マストドンだったから流行った」とも言えるのですが、しかしマストドンでなくともよかったとも言えるのは、歴史は繰り返すものだからです。オープンな環境とクローズドな環境を行ったり来たりするのです。

だから、「マストドンが流行るのかどうか?」という質問があったとして、あまり意味を感じません。使っている人はマストドンだろうがなんだろうが関係ないのですから。たまたま、そこに「マストドン」があったというだけなのです。


マストドンらしさとは、繰り返しになりますが、分散したインスタンスの存在です。

SNSの歴史を見ても10年くらいで,オープン環境 (BBS) とクローズ環境 (mixi) をいったり来たりしているという洞察が書かれている。また,マストドンが日本で流行った理由として,ツイッターのようなUIを持っていたことと,タイミングがよかったというのを上げていた。そして,Mastodonの特徴は分散したサーバーであること,自分にあったサーバーの存在を上げていた。

p. 104: マストドンの公式アカウント導入は認証がキーだった

friends.nicoの最大の特徴は、必須ではないものの、マストドンアカウントとニコニコアカウントをひもづけできるところにあります。

「いまだに日産のアカウントって本物なの?ってよく言われてます(笑)。ニコニコ動画のIDとひもついているのはなりすまし問題の対策としても最適解でした。このおかげで少なくfriends.nico中では認証アカウント的にふるまうことができるようになったわけです」

Mastodonブーム当初から企業公式アカウントとして運営していた日産の話が書かれている。日産はかねてより,Youtubeやニコニコ動画などSNSを活用してファンの増加を測っていた。その一環としてMastodonにも参加したとのことだ。企業公式アカウントとしては,認証が大事になるようだ。たしかに,サーバーごとアカウントは自由に使えるので,なりすましの問題もある。他のアカウントとの連携は認証としてたしかにありだと感じた。

p. 124: マストドンはpixivの何を変えるのか?

清水: コミュニケーションの「頻度」とその場所に滞在する「時間」が「活動の場」としては重要だと考えています。これまでpixiv内でのコミュニケーションというのは、「作品」を起点としたものだったのです。

新しい作品の投稿がない限り、なかなかユーザーは訪れてはくれません。つまり、作品の投稿やその閲覧という「能動的な」行動が伴わないと、コミュニケーションが生まれず、pixivを楽しんでもらおうとしても、きっかけがなかったわけです。

Mastodonの企業運営サーバーとしてブームの当初から運営が始まったpixivの担当者へのインタビューが掲載されている。pixivは自社のサービスのさらなる活性化という目的で活用しているようで,考えが参考になった。

p. 140: pixivドメインブロック問題

つまり、日本では許容される表現も、海外では文化的に受容される以前に、法律違反になり、インスタンスの運営者が罪に問われるおそれがありました。彼らも仕方なくPaWOOを遮断したはずです。


指摘されたのが、罪に問われる画像をサーバーに置いていることが問題の本質だということです。つまり、法律上は「所有」とみなされるわけです。


であれば、そこを技術的に解決しようと。そこで我々も、「各インスタンスの管理者がインスタンスごとにメディアファイルをキャッシュ(一時保管)しないという選択をとれる設定を加えてはどうか」という提案をさせてもらいました。法律的にもそれで問題ない、という結論となり、その方向で対応策がとられることになったのです。

ブーム当初に開発者のオイゲンの運営するMastodonサーバーがpixivをドメインブロックするという事件があった。この件に対してどのように対応したかが書かれていた。

p. 156: これまでもあった、分散SNSの数々

ッイッターやフェイスブックのような近年のSNSに対抗する分散型SNSにも、1章で紹介した「Identi.ca」、あるいは2010年に誕生した「diaspora*」といったものや、ここ数年でも「Synereo」「AKASHA」「Trsst」などといった複数の試みがあります。

初見のSNSがあった。

p. 162: 人間行動をプロトコルにする

OStatusは単一の規格ではなく、既存のいくつかのプロトコルを組み合わせたものでした。

たとえばユーザーの投稿を世界中のサーバーにプッシュする「PubSubHubbub」という仕組みや、投稿に対してついたコメントがシャケが川を遡上するように発言者の元に戻る仕組みを記述した「Salmon」、そしてサービス上の個人を特定するための「WebFinger」などといったものです。

OStatusがどのように既存プロトコルを組み合わせているのかの説明があり,イメージがついた。

p. 172: サーバー管理者の責任

— ロリ表現の画像をすべてNSFW指定したとしても欧州の管理者にとっては画像がキャッシュされているだけで問題になる。

— NSFWではない普通の画像でも、場所によっては法的問題が出てくるものはある。ロリが増加どうかだけを問題にするのはアメリカ中心的な考え方だね。

— ロシアでは悲しいことだけどLGBT関連の画像は単純所持でも違法になる可能性がある。こうした画像が連合タイムラインに入るとまずい。


中央集権的なSNSから、分散型SNSに移行するということは、データはよりユーザーに近い場所に存在することになります。しかしデータが手元にやってくるということは、それに対する責任もまた、インスタンスを運営する側にやってきます。そしてそれぞれのユーザーや、サーバー管理者は、その国の法律に従うことが要求されるのです。

p. 202: ツイッターやフェイスブックとマストドンの対比

堀 もう一点、小林さんの問題提起の中に「ツイッターやフェイスブックのような」という比較がありますが、そもそもその対比がおかしいのではないでしょうか。設計上、そうなる必要がないのがマストドンなのです。


問題になるのは、「あなたはどのインスタンスに属していて、そのインスタンスがあなたにとって居心地の良い人々が集まる場所か」という点です。

ツイッターやフェイスブックとマストドンの違いとして,ローカルタイムラインを意図した意見だった。

結論

2017-04に巻き起こったMastodonブームから2か月のスピード出版であり,当時の熱狂を目の当たりにした著者たちによる洞察が記されている。

SNSの流れや運営していくうえでの問題,企業がMastodonへ取り組む際の考え方,そして分散SNSと既存SNSの対比など,Mastodonだけでなく分散SNS全般に通用する議論が展開されていた。

特に企業インタビューが入っているのがよく,当事者の生の声が入っており,参考になった。

分散SNSの今後を考えていくうえで,重要な議論があったように感じ,手元に置いておきたいと思える1冊だった。

パーマリンク: https://book.senooken.jp/post/2019/02/06/

書評☆3 Mastodon 入門ガイド | 使い方とさくらのクラウドを使ったサーバー構築方法の簡単な解説

概要

分散SNSのMasotodonの入門書となっている。内容は大きく2部構成となっていた。

  1. MastodonのUI,使い方の解説
  2. さくらのクラウドによるMastodonサーバーの構築方法解説

前半のMastodonの使い方は,画面キャプチャーをふんだんに掲載しており,全くの初心者にとっては画面構成などが参考になるかもしれない。ただし,もともとがそんなに複雑なものでもないので,使っていればわかることかもしれない。

後半のサーバー構築方法はさくらのクラウドを使い,Dockerを使ったもので,できる限り簡単に説明しようとしているのを感じた。冒頭でMastodonのサーバー構成が図解されており,かなり複雑な構成になっていることに驚いた。PostgreSQL,SideKiq,Redisなどサーバーが何個も必要で,メールサーバーまで自前で立てている。おまけに,VPSで自分でDNSの設定までしないといけない。さすがに難しすぎる。

なので,さくらのクラウドに限定して解説していたのは悪くはなかった。ただし,複雑なことや込み入ったことの話がなくて物足りなかった。また,2017年8月の出版のため,今も同じ手順でインストールできるかどうかはわからない。

結論

日本でMastodonブームが起きたのは2017-04である。その4か月後ということで,比較的早めに出た本だ。

簡単な使い方から,インストール方法まで書いてあり,参考にはなる。しかし,込み入った話などはあまりなく,ページ数も160ページ程度と文量が少なく,物足りなかった。

パーマリンク: https://book.senooken.jp/post/2019/02/05/