年間報告: 2019年 | 150冊から選んだ5冊

2020年になったので2019年の読書状況を振り返り,2019年の5冊を取り上げたい。

2019年の読了本とその書評は以下のURLで確認できる。

状況

読了日から眺めるにだいたい以下の流れで本を読んでいっていた。

  1. IoT関係の本
  2. 協力関係の本
  3. IT契約・人材派遣の本
  4. フリーランス・独立開業の本
  5. Mastodon関係の本

昨年に続いて年初は,今後はIoTが流行になるだろうと思い,次はIoTの仕事を取りたいなと感じてIoT関係の本を10冊ほど読んでいた。しかし,IoTをやるよりも他にWeb関係とか一般的なITの知識を身につけたほうがいいと感じ,IoTの勉強は休止した。

その後,2018年年末から年始にかけてIoTのハッカソンに参加した。自分がリーダーを引き受けることになったのだが,メンバーの協力をほとんど得られなかった。また,当時の所属企業の同僚ともあまり協力関係を築けず,悩んでいた。そこで協力関係に関する本を10冊ほど読み漁っていた。

2019年の半ばまではSESの企業に勤務していたのだが,勤務形態や会社のやり方に疑問を持つようになった。そこで,IT契約やSESの実態である人材派遣に関する本を20冊ほど読み漁った。

給与交渉が決裂し,退職することを考え出した夏場後半からフリーランスや独立開業の本を20冊ほど読み漁った。

またこれらとは別でMastodonの本の書評を本として出したいと個人的に考えており,年初から年末の10月頃にかけてMastodonに関する本を15冊ほど読み漁った。

その他,技術書やビジネス書などを間に挟んで150冊という冊数の読了となった。

月に15冊のペースで読んでいる月が半年ほどあり,書評作成で土日が終わるようになってしまったため,年末からは読書のペースを落とした。だいたい月に10冊程度が適量ではないかと感じた。

5冊

2019年に読んだ150冊の内から特によかった5冊は良かった順に以下となる。

  1. 人を助けるとはどういうことか――本当の「協力関係」をつくる7つの原則
  2. ザ・ゴール 2 ― 思考プロセス
  3. 魔法のように片づく!見つかる!超ファイルの技術
  4. 新版 トコトンわかる 個人事業の始め方
  5. 多様な派遣形態とみなし雇用の法律実務

詳細は上記にリンクを貼った個別の書評をご覧いただくとして,簡単に何がよかったかを紹介したい。

人を助けるとはどういうことか――本当の「協力関係」をつくる7つの原則

書評: 書評☆4 人を助けるとはどういうことか | 支援関係の失敗の原因はワン・アップとワン・ダウンの不均衡の放置 – senooken.jp

協力関係を構築するための原則が書かれていた。人に道案内をしたり,仕事で作業する場合など,他人との協力プレイは日常茶飯事だ。しかし,コンサルタントなどでも失敗することもよくある。

そこで,本書では経営学の組織論の分野では伝説的存在である著者が長年の経験で導き出したコツが書かれている。

その本質は,支援関係で発生する「ワン・アップ」と「ワン・ダウン」の不公平の解消から始まる。

なんとなく,依頼を受ける側が立場が上になり,依頼者が下の立場になることをしばしば感じる。ここがそもそもの失敗の原因であり,これを解消し,必要な情報をお互いやり取りするためのコツとして,「謙虚な問いかけ」やプロセス・コンサルテーションという著者が推奨するコンサルタントの手法が紹介されていた。

この手の本は結局,リーダーや幹部などおえらいさんにならないと,そもそも実践できない手法が多いのだが,本書は違った。日常生活で適用可能なレベルの方法だったので,早速意識するようになった。

実際に,歯医者に訪問した際に,こちらの依頼内容と違う治療を始めた医者がいた。本書を読んだおかげで,なぜ失敗したのかという原因もわかった。つまり,質問やコミュニケーション不足にも関わらず,勝手な思い込みで治療を始めたからだ。

チームメイトや同僚,ご近所さんとの付き合いをうまくするのに役立つ本だった。

ザ・ゴール 2 ― 思考プロセス

書評: 書評☆4 ザ・ゴール 2 | トヨタ式「5回のなぜ」よりも強力な「現状問題構造ツリー」 – senooken.jp

続いて,かつて2000年頃に日本で一大ブームを沸き起こした「ザ・ゴール」のシリーズから「ザ・ゴール2」を紹介したい。2を紹介するということで,もちろんその前作の「ザ・ゴール」も読んでいる。

「ザ・ゴール」というシリーズは,経営の改善を小説仕立てで論じた異例の本だ。「ザ・ゴール」では潰れかけの工場の工場長である主人公が,著者に見立てた物理学者のかつての先生との思わずの再開から指導を受け,工場を立て直すというサクセスストーリーだ。

こちらは工場のボトルネックを解消するという視点で物語が進み,こちらはこちらで面白かった。ただし,あくまでボトルネックを解消するという,今となっては当たり前のことが書いてあるので,どちらかというと物語として面白かった。

今回取り上げるのはその続編の「ザ・ゴール2」だ。今度の物語は,前作の主人公が出世し,副社長として3社の子会社を立て直すという話だった。本書は「ザ・ゴール」シリーズの元となっている「制約の理論 (Theory Of Constrain: TOC)」の手法がふんだんに盛り込まれた内容だった。

既に,書籍冒頭の十数ページで読み込まれる内容があった。よくある親子喧嘩をうまく対処する方法が披露されていた。「対立解消図」という思考ツールを用い,お互いの言い分や望むことを紙に書き出し,どうすればお互いにうまくやれるかを探り,対応していた。既にこの時点で日常生活に取り込めると感じる手法の紹介があり,期待できる本だった。

この他にも本書中盤で何回か登場する「現状問題構造ツリー」により,抱える問題の全ての根本原因を特定する過程が描かれていた。これはUDE (UnDesirable Effect: 望ましくない結果) を列挙し,それらを論理的に結びつけながら全体の根本原因を特定する方法で,それなりに時間のかかる手法だ。

問題解決の方法としては,トヨタ生産方式で使われる「なぜを5回繰り返す」というものがある。こちらの方法は抱える問題の解決策の内1ルート導き出す直線的な解決方法だ。しかし,結局全部の問題を解決することは難しく,むしろ的外れな策になることもありえる。一方,本書で書かれていた「現状問題問題構造ツリー」は抱える問題を全てを描き出し,メッシュ状に張り巡らされた根本原因を特定できるため,直線ではなく平面的なアプローチができ,「なぜを5回繰り返す」も効果的に感じた。

特に,対立解消図は日常の意見の相違や対立でも活用できる。実際に2019年の年末年始に実家で今まで散々見てきた両親の喧嘩に対して対立解消図を適用してみた。すると,今まで誰も認識できていなかった喧嘩の根本原因を特定し,対策を打ち立てることができた。

1番目に紹介した「人を助けるとはどういうことか」でも書いたが,この手の自己啓発本は,おえらいさんしか実践できず,一般人には適用できないという手法が多い。しかし,本書も一般人が,仕事はもちろん日常生活のレベルで適用できる手法が解説されており,有益だった。


魔法のように片づく!見つかる!超ファイルの技術

書評: 書評☆4 魔法のように片づく!見つかる!超ファイルの技術 | 「超整理法」の押し出し式ファイリングを改良したWI式ファイリングシステムは書類整理に効果あり! – 巨本の山の上に立つ

3冊目は整理術に関する本だ。ライフハックや仕事効率化というテーマには以前から興味があって,ときどき読んでいる分野の本だ。書類の重ね順や並べ順について気になってGoogle検索をかけたらヒットして気になった借りたのが本書だった。

ファイリング術として有名で,書評は付けていないものの過去に読んだ野口による「「超」整理法 – 情報検索と発想の新システム (中公新書)」やその他の山根式の整理法など,数々の整理術を実践した著者による,既存の整理術の問題を解消した至高のファイリング術であるWI式ファイリングシステムを解説していた。

簡単に説明すると以下となる。

  1. 机の上のすぐに発生するような細々したものは野口式の押し出しファイリングシステムで使った順で机の上の本立ての封筒にしまう。
  2. 頻繁に使わないものは封筒に分類を書いたラベルを貼って棚にしまう

封筒を使ってラベルを貼ってしまうという手軽な方法で,あらゆる書類やCDの類をひとまとまりに整理できる

個人事業主になり,確定申告で書類をまとめる必要がでてきてのもあり,この手法を導入した。今まで扱いに困っていたものも同じ分類で封筒にまとめることができ,すっきりした。書類の管理で困っている人には是非実践していただきたい方法だ。

新版 トコトンわかる 個人事業の始め方

書評: 書評☆4 新版 トコトンわかる 個人事業の始め方 | 開業解説本の中では文量・網羅性が最も高く,万人にお薦めできる1冊 – senooken.jp

4冊目は個人事業開業に関する本だ。9月に給与交渉決裂のため所属企業を退職し,個人事業主として次のいい会社へ就職するまで働くことにした。

それで個人事業を始めるに必要な事務手続きなどを行う必要が発生した。何をすればいいのか全くわからず,いろいろ調べていたときに読んだ1冊だ。

個人事業開業に関する本はたくさん出ており,10冊くらいは目を通した。ただし,全体的に文量の少ない本が多く,情報の網羅性の欠けるものも多かった。

その中で本書は文量が類書の中で最も多く,内容も詳しかった。何度も改版されるだけのことはある手元に1冊はおいておきたい本だった。

多様な派遣形態とみなし雇用の法律実務

書評: 書評☆4 多様な派遣形態とみなし雇用の法律実務 | 豊富な判例・条文を掲載した派遣問題に必須な1冊 – senooken.jp

最後の5冊目は人材派遣に関する本だ。2019年9月まではSES企業に勤務しており,仕事の方針や客先常駐の仕事に対して疑問を持って調べていたときに読んだ1冊だ。

偽装請負や二重派遣など人材派遣に関しては怪しい話が多い。気をつけないとブラック企業に搾取されてしまう。ネット上にも情報はあるが,法令を参照していなかったり断片的で不正確情報しかないように感じた。

本書はこの分野の有識者が,法体制や経緯なぜ違法なのかの部分まで網羅的に書かれている。

人材派遣についての違法性について議論する場合の基本情報源として重要に感じた。値段が少々高いのだが,前作でも内容的には通じる部分が多い。人材派遣やSES企業に勤務する場合には,是非ともどちらかは読んでおきたいと思える本だった。

結論

2019年の読書を振り返り,特によかった5冊を紹介した。

退職,個人事業主の開始などで,あまりIT技術書の読了数は少なめな年になった。

2019年は読書や書評で休日に多くの時間が割かれてしまい,実作業がそこまで進まなかった。このことは過大であるので,2020年は読書の冊数を月10冊程度に絞り,量より質をこなし,実作業を進められるようにしたい。

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