書評☆3 現場の活用事例でわかる IoTシステム開発テクニック | IoTハッカソンの取り組み事例とコツを紹介

概要

日経SYSTEMS 2017年4月号〜2017年9月号に掲載した「リーダーが知っておくべきIoTの急所」,2017年10月号〜2018年3月号に掲載した「現場の最前線から知るIoTの今」の各連載に加筆・修正したものとなっている。

IoTのことが十分にわからない初心者,IoT導入に取り組む方々,ビジネスパーソンを対象に書かれている。大きく3部構成となっている。

  1. IoTの解説
  2. ウフルの取り組み事例
  3. 組織の推進体制・重要なスキル体系

著者の所属する株式会社ウフルでの取り組み事例が主な内容だった。

ページ数が160ページ程度と多くなく,要所要所で図解が取り入れられており,悪くはなかった。ただし,取り組み事例が多かったので,ここに興味を持てるかどうかだと感じた。

参考

p.90: 一苦労を越えるためのひと一工夫が重要に

地方におけるIoT関連で解決可能な課題の代表的なものを、図6に示します。


  • 農地や作業進捗の見える化
  • 鳥獣被害対策
  • 養殖・水産資源の見える化
  • 中山間部過疎地域への見守りサービス
  • インバウンド外国人向け多言語誘導サービス
  • 地場製造業向け取引拡大プラットフォーム
  • 商店街の回遊支援共同アプリ
  • 商用車の稼動状態管理
  • 河川、ダム、森林災害防止
  • 自治体向け災害対策アプリケーション

図6 IoT関連で解決できる地方の課題、代表的なものトップ10

長野県伊那市において現地の伊那市有線放送農業協同組合 (いなあいネット) と共に取り組んでいる「つながるIoTサービス」の開発プロジェクトを通して,IoTハッカソンを多数開催していた。その中で,IoTハッカソンで解決できる代表的なものが書かれており,参考になった。

結論

IoTハッカソンやIoTに対しての取り組み事例が印象的だった。IoTハッカソンについて書かれた本はあまりないのである意味貴重な本だった。

ただし,やや文量が少なかったので,ちょっと物足りなかった。

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書評☆2 IoT時代のサイバーセキュリティ | オムニバス形式で多数の著者による制御システムのセキュリティ動向解説

概要

2012年に設立された技術研究組合制御システムセキュリティセンター (CSSC: Control SYstem Security Center) の活動を中心に,制御系のサイバー攻撃に対する防御の動向をまとめられている。

制御系システムは,社会のインフラを担っており,重要であるが,情報が不十分とのことで,制御に関する話が多い。なじみのない話が多かったので,内容が難しかった。

また,220ページを9人の著者で,分担して担当している。そのため,1テーマあたり30ページくらいしか文量がなく,テーマごとの内容が浅くなってしまっていた。第3章 脅威の動向が一番参考になるかと思ったが,あくまで,概観や動向を解説しているだけで,具体的な内容が少なくあまり参考にならなかった。

参考文献が書かれているが,本文中での言及が少なく,わざわざ参考文献まで当たろうとは思えなかった。

結論

学者が9人も参加しており,文献引用があるにも関わらず,1テーマごとの文量が少なくなってしまい,薄い内容だった。

はじめにも書かれている通り,著者たちの活動の記録という意味合いが強く,読者のことが余り考えられていないと感じた。

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書評☆3 未来IT図解 これからのIoTビジネス | 多数の図解でIoT活用分野・事例を浅く広く解説

概要

最新のIoTビジネスの活用事例と今後の展望を解説している。

この本の特徴は図解が多く,わかりやすいところだ。書籍の半分以上のページに図解が配置されており,ぱっとみてイメージがつかみやすかった。

文量も160ページほどと多くなく,軽い気持ちでIoTがどういうところで使われていくかを把握できる。

ただし,文献引用がなく,踏み込んだ内容はあまりないので,あくまでイメージをつかむための本だと感じた。

結論

IoTビジネスの活用事例が解説されている本だった。図解が多く,ざっとどういうところでどんな使われ方がするのかを把握するのにはよい。

しかし,踏み込んだ内容がないので,詳しく知る場合は別の本をあたる必要がある。

パーマリンク: https://book.senooken.jp/post/2019/01/29/

書評☆4 ハッカーの学校 IoTハッキングの教科書 | 内容は高度だが具体事例多数で実践的

概要

「NHKスペシャル」という番組で『IoTクライシスが忍び寄る (前編)』をきっかけに作成された本となっている。1冊でIoTに関するハッキングのノウハウを学べる本となっている。

IoTハッキングの基礎知識から,環境構築,ハッキング対象ごとの具体的なハッキング方法が解説されており,具体的な内容が多かった。

IoTハッキングについてはあまり詳しく,興味も薄かったが,評判が良かったので読んでみた。内容は悪くなかった。

ただし,ハッキングということもあり,専門用語が多く,IoT特有のハードウェアやファームウェアなどを扱う内容があり,内容は難しかった。

結論

IoTハッキングに関する本はあまり数がないので,本書は貴重な本だろう。IoT製品の開発者やセキュリティ担当者など,この分野に関わりのある人にとっては有益な本になると感じた。

それ以外の人,特にセキュリティに詳しくない人にとっては,内容が高度なので読むのが辛いのではないかと感じた。

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書評☆3 植物は〈知性〉をもっている | 植物なしでは人は生きていけない

概要

動物愛護の集まりで農学部の先生がこの本のことを言及していたのが印象に残っており,何年か遅れて読んだ。

題名通り,植物は知性のある生き物だということを説明している。人間からしてみれば,植物は動物とは異なり,物として扱いがちだ。この理由は,人間に比べて植物が非常に遅く動いているからだ。人間の見かけ上動いていないように見える。

しかし,実際には1日のサイクルで移動する。日の当たる方向に向きを変えるし,水のある方へ根を張り巡らせる。ゆっくりだが確実に動いている。そして,人間の五感に相当する機能も備えている。光を検知し,振動を検知,接触も検知し,根で土壌中の化学物質や水も検知する。化学受容体で匂いも検知できる。

植物と動物の進化の方向性が大きく違う。植物は定住することを選び,モジュール構造をとっている。これにより,動物に身体の一部を食べられても問題ない。そして,独立栄養生物だ。太陽の光と水,二酸化炭素があれば,光合成という奇跡により自分で栄養を生成できる。

人間は植物なしでは生きることはできない。その当たり前のことを再認識できた。植物のことを知れば知るほど,その驚きの機能に仕組みに興味を持った。

なお,動物愛護で度々問題となる植物は痛みを感じるかという問題については議論がなかった。

参考

p. 11: 人間が植物の生命を正しく認識できない理由

マンクーゾの主張によると、人間が植物の生命を正しく認識できない理由は、彼が十代のころに読んだあるSF小説に書かれていたという。その小説によると、高速 の次元に生きるエイリアンの種族が地球にやってきたが、人間の動きをまったく感知できな かったために、人間は「自力で動こうとしない物質である」という論理的な結論をくだした。そして容赦なく人間から搾取したのである。

これは目から鱗だった。植物は生きているし,動いてもいる。しかし,人間からするととても遅い。動かないものは物と誤認してしまう。相対的な問題だと感じた。

p.52: 植物と動物の進化の違い

定住の生活を選んだ植物は、地面、空気、太陽から、生きるために必要なものすべてを引き 出さなければならなかった。それに対して動物は、栄養をとるためにほかの動植物を食べなけ ればならず、運動に関わるさまざまな能力(走る、飛ぶ、泳ぐなど)を発達させていった。


動くことがなく、つねに捕食者に狙われている植物は、まずは外からの攻撃に対して、いわば「消極的抵抗」手段を発達させた。植物の体はモジュール構造になっていて、どのパーッも重要ではあるものの、どれも絶対に必要不可欠というわけではない。こうした身体構造は、動物と比べてとても優れている。とくに、地球上に存在する膨大な数の草食動物やその旺盛な食欲から逃れられないことを思えば、非常に有効なしくみである。モジュール構造の体のいちばんの利点は何か?それは、たとえ動物に食べられたとしても、植物にとってはそれほど大きな問題ではないということだ!いったいどこにそんな動物がいるだろうか?

植物と動物は進化の方向性が大きく違う。それにより,植物の身体はモジュール構造になっており,ある部分がなくなっても問題ない構造になっている。これは分散型の構成であり,理にかなっている。

p. 105: 植物は低周波の音が好み

じつは、植物の成長に影響を及ぼしているのは音楽のジャンルではなく、音楽を構成する音の周波数なのだ。ある一定の周波数、とくに低周波(一〇〇〜五〇〇ヘルツの音)が、種子の発芽、植物の成長、根の伸長にいい影響を与える。逆に高周波には成長を抑える効果がある。

植物の成長に音楽が効果があるというのを何かできいたことがある。100-500ヘルツの低周波の音が好影響というのは初耳だった。

p. 161: 第5章 はるかに優れた知性

生物学では、ほかのどの生物種よりも広い生活圏を獲得している種を「支配的」とみなす。


じつは、地球上のバイオマス(つまり、生物の総重量)のうち、多細胞生物の九九・七%(実際は九九・五〜九九・九%のあいだで変動し、その平均値が九九・七%ということ)は、人間ではなく植物が占めている。人類とすべての動物を合わせてもわずか○・三%にすぎない。

この事実からすれば、まちがいなく地球は「緑の星」だと定義できる。そこに議論の余地はない。地球は、植物が支配している生態系である。

当然のことながら,地球は植物で覆われている。植物が地球を支配していると見ても問題はない。当たり前のことだが,あまりこういうことを意識知ることはないので再確認できた。

p. 163: 脳がないなら知性はないのか?

「そもそも知性とは何か?」。知性は意味が広すぎて定義がむずかしい概念なので、当然のことながら、さまざまな定義がたくさん存在する(もっとも愉快な定義は「知性の定義は、定義を行なう研究者の数だけ存在する」だろう)。

そこで、まず最初に行なうべきは、私たちの問題にふさわしい定義を選択することだ。植物の知性を考えるために、かなり広い定義を使うことにしよう。それは、「知性は問題を解決する能力である」という定義だ。

知性の定義が書かれている。脳がなければ知性がないわけではない。「問題を解決する能力」と定義すれば,植物にも確かに知性はあるだろう。

p. 104: 植物に関する生命の尊厳

一九九八年にスイス連邦議会によって設立された「ヒト以外の種の遺伝子工学に関する連邦倫理委員会」は、この数十年に集められた科学的データを検討し、二〇〇八年末に「植物に関する生命の尊厳-植物自身の利益のための植物の倫理的考察」と題された報告書を提出した。


議論が分かれる問題もまだまだ数多くあり、わかっていないことも数多く残っている。それでも、スイスの生命倫理委員会は、倫理学者、分子生物学者、ナチュラリスト、生態学者をふくめ、満場一致で合意した。「植物を好き勝手に扱ってはならないし、植物を無差別に殺すことは倫理的に正当化できない」と。

念のためにはっきりさせておくと、植物の権利を認めることは、植物の利用を縮小したり制限したりすることを意味するわけではない。動物の尊厳を認めたからといって、動物を食物連鎖から除外したり、動物実験を禁止したりするわけではないのと同じだ。

植物の尊厳に関する話があった。スイスでは植物にも尊厳があると報告があったようだ。たしかに,生きているのだから存外に扱うのは控えるべきだろう。なかなか難しい問題だ。

結論

植物には知性があるという,あまり普段意識しないことを学べた。

参考にも書いた,速度が遅ければ物質と誤認するというのが,人間が植物を物質とみなすことの発端だというのは,眼から鱗だった。自分と違う存在,生命について考えが広がった。

教養を深めるのにはいい本だった。

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書評☆3 AI・クラウド・IoT – 2020年度版 | 就活生向けIT業界紹介

概要

AI・クラウド・IoTをキーワードにIT業界を紹介している。特にIT業界未経験の新卒,転職などの就活人向けの本となっている。

大きく以下の5点が書かれていた。

  1. 社員インタビュー
  2. 注目企業紹介
  3. 業界基礎知識解説
  4. 業界・職種分類解説
  5. 企業データ

IT業界未経験者を念頭に置いており,基礎的な用語などから解説されており,わかりやすかった。

就活の手始めに業界にどういう会社があってどういうことをやっているのかの概要を把握するのにはよい。

ただし,いろんな会社のことが書いてあるので,目移りしたり混乱するかもしれないので注意が必要だ。ここで得た情報を元に,気になる会社や業種などを深堀していくのが良いと思う。

結論

AI・クラウド・IoTをテーマに,IT業界の企業が浅く紹介されていた。IT業界未経験者を念頭に置かれており,基礎的なことも解説されている。ただし,基本的には内容が浅いので,いいことしか書いていない。悪いことはあまり書いていない。

IT業界未経験者の業界研究の一歩としてはまとまっていて悪くはなかった。ただ,自分はIoTについて詳しく知りたかったので,そういう目的には合わなかった。あくまで就活生向けの就活本だった。

パーマリンク: https://senoken.jp/blog/2019/01/20/

書評☆3 リーダーにカリスマ性はいらない | 日本HPでのエンジニアあがりのリーダーとしての成功事例紹介

概要

2018年頃の職場で,上司がしょうもない人間ばかりで,よいリーダーとはどういう人間なのか,どうすればいいのかについて調べていたときにみつけた1冊の本だ。

日本ヒューレット・パッカード社 (HP) に1991年から2010年まで20年勤務し,そこでエンジニアあがりのリーダーとして成功した著者による成功事例集が書かれている。

2000年代初頭に,Linuxがこれから商業分野で普及し始めるぞという未明の段階で,HPでLinux事業部のリーダーとして著者が任命された。その中で,著者の行動がどのように成功に導いたかがまとめられている。

図解も取り入れられて読みやすくはあった。ただし,書いている内容が偏っていると感じた。本書で問題に思ったのは以下2点だ。

  1. 前提条件がすでにハイレベル
  2. 体験した成功事例しか書いていない

1点目だ。まず,著者はいわゆる高学歴だ。そして,HP自体も大企業であり,在籍している社員もある程度のエリート揃いだと想像できる。そのような現場で通用するリーダー論というのは,同じようなレベル感の現場でしか通用しないだろう。書いている内容は悪くはないが,適用可能かどうかは別だ。

2点目だ。著者の経験ベースで書かれている。試行錯誤した内容が書かれているが,基本的には自分で実践して成功したことしか書いていない。では,他のリーダー論と比較してどうなのかという観点は一切ない。文献の引用もない。あくまで自分の経験に基づくことだけだ。1点目と関連するが,それはたまたまいろんな事象が組み合わさってうまくいっただけではないのかという疑念が残った。

参考

p. 060 HPの「10ステップ」ビジネスプラン

運のいいことに、当時のHPでは、前者共通のビジネスプラン作成用標準フレームワークが開発されていた。 "Business Planning for Competitive Advantage – The Ten-Step Approach" (通称「10ステップ」) と呼ばれるツールだ。

「10ステップ」では、ビジネスプランの作成手順を10段階 (事業美人の策定、市場分析、競合分析、必要となる製品・サービスの選定、数値目標、組織体制、スケジュール、課題など) に分けており、各ステップごとにツールや例題を活用しながら計画の作成を支援してくれる。

社員がこの10ステップを踏むだけで、効果的にビジネスプランを作成できるというわけだ。

HPの「10ステップ」ビジネスプラン

  1. ミッション・ビジョン
  2. 中期目標 (3カ年あるいは5カ年)
  3. 市場分析 (顧客、パートナー)
  4. 市場分析 (競合)
  5. 商品 (製品およびサービス)
  6. 実行プランと推進体制
  7. 財務分析
  8. 外部の問題と対応策
  9. 内部の問題と対応策
  10. 1年目のブラン

なお、ぼくがHPを退職した2010年時点では、長らく活用されてきた「10ステップ」は役割を終え、違うツールが導入されていたことも念のため追記しておこう。

HP社でのビジネスプラン作成の手順が書かれており参考になった。

結論

書いている内容は悪くなかったし,図解もあり読みやすかった。

ただし,すでに著者が十分恵まれた環境で出した成果に基づいていることには注意したほうがいいだろう。一流企業で成果を上げるのと,底辺どブラック企業で成果を上げるのとでは,意味が全く違う。現場や従業員の室が高い分,前者のほうが圧倒的に簡単だ。

他のリーダー論,特に三流企業でリーダーとして成功したリーダー論など,他のやり方との比較,文献引用などがあるとなおよかった。

パーマリンク: https://book.senooken.jp/post/2019/01/13/

書評☆4 IoT時代のプラットフォーム競争戦略 | JavaとVMwareの事例を元にした読み手に知性を要求するプラットフォーム戦略解説

概要

クラウドサービスや,今後も進化が見込まれるIoTにおいて,プラットフォーム製品戦略が重要度を増してきている。本書では,JavaとVMwareの事例を元に,プラットフォーム製品戦略を解説している。

書名に「IoT時代の」とあるが,内容はプラットフォーム戦略についてのものであり,IoTに特化したものではない。ただし,内容が汎用的なものなので,IoTにも十分通じる。

この本で良かったのは以下2点だ。

  1. JavaとVMwareの戦略の解説
  2. JavaとVMwareの戦略を元に,プラットフォーム戦略の一般化

まず,プラットフォーム戦略の事例として,JavaとVMwareをとりあげ,それぞれの製品がどのようなことをやっていたのかを整理していた。

JavaもVMwareもIT分野では成功した製品であり,どういう経緯があったのかを知ることができたのは,単に教養としても良かった。

それぞれの製品では,共通してWindows (Hyper-V) がプラットフォームの競合となった。これに対して,どのような戦略でどこで収益を上げていたのかまで解説していて参考になった。

続いて,これらの2製品を元に,プラットフォーム戦略としては具体的にどういう戦略をとっていけばいいのかを導いていた。ここで導かれた内容は,プラットフォーム戦略として一般的に通用する内容だったので,IoTなど他のプラットフォームへの展開も可能と感じた。

著者がビジネス寄りの学者であり,本書も学術的な面も重視していたので,前半部分は内容が固くて読みにくかった。しかし,後半部分については具体的な内容や戦略が解説されていた。そのため,前半で書かれていた概念なども戻って読むことで理解できるようになった。

その他にも,プログラムやコンピューターの起源についてもまとまっていて,IT技術者の教養としてもよかった。

参考

p. 11-17: 第1節 コンピューター・ソフトウェアの階層化の時系列整理

p. 30: 脚注

コンピューターの起源についてまとまっていて参考になった。

p. 53-83: 第4章 後発プラットフォーム製品提供者の操作項目,第5章 推論によるドミナント化モデルの提示,第6章 階層介入戦略と位置付け

前章と同じく先行研究レビュにより,プラットフォーム製品のドミナント化の要因に影響をもたらす後発プラットフォーム製品提供者の操作項目として,アクセス可能ユーザー数の増加,マルチホーミングコストの低減,隣接対象プラットフォーム製品の多数選定,持続的収益確保モデルの遂行,の4つを提示する。

プラットフォーム戦略を行う上で,サービス提供者が操作可能な項目についての整理,プラットフォームの支配下モデル,他のプラットフォームへの介入戦略方法のモデルを解説しており,考え方が参考になった。

p. 62: 第2節ドミナント化のモデル

ここでは先行研究から導かれた後発プラットフォーム製品におけるドミナント化のモデルが図示されている。いわれてみれば,当然のことが書かれているが,これを図示して形にしているというのが重要だと感じた。

p. 118: 解説4 シリコンバレーと企業創出システム

シリコンバレーが最先端のIT企業の集積所として有名だ。なぜシリコンバレーがこうなっているのかを解説していた。端的にいうと,人材,技術,資金が密集しており,これらが循環しているからだ。

p. 169: 第8章 事例から導かれた新たな効果や現象

Javaの事例とVMwareの事例の操作項目の観点での分析ならびに確認から,導出される階層介入型プラットフォーム製品特有の戦略に関する仮説は以下である。

  • 仮説3-1: コモディティ化の誘発
  • 仮説3-2: 延命の助長
  • 仮説3-3: 包囲されにくい防衛策
  • 仮説3-4: バンドルの分断

この章では,JavaとVMwareの事例を元に,4の操作項目が何であったのかを整理 (p. 174: 第2節 戦略の示唆) しており,参考になった。また,JavaとVMwareの事例から,戦略上の示唆・仮説が出されており,これがとても参考になった。

p. 183: インプリケーション6 IoT時代のプラットフォーム競争戦略

戦略策定担当者は,現状の自社のプラットフォーム製品の市場での状況を鑑み,慎重に戦略をねらなければならない。なぜなら,本書でこれまで説明した隣接プラットフォーム製品との「相互接続」によるアクセス可能ユーザーの流動性が,有意性を強めたり弱めたりするためである。

いよいよ書名にもあるIoTについてのプラットフォーム戦略についての解説だった。ここまでで,プラットフォーム戦略について解説されてきれいるので,これらを念頭に戦略を練る。

また,ここだけでなく1-6の全インプリケーションは全て示唆に富んでおり参考になった。

p. 190: 参考文献

本文中で参照された文献72点の引用元が記載されている。引用文献が多ければ多いほどいいというものではないが,参考になった。

結論

書籍の序盤は専門用語が出てきたり,固い文体で読みにくかった。しかし,後半にいくにつれて内容が理解できるようになった。コンピューターやプログラムの始まりから,世界を変えたJavaやVMwareの事例の解説など,教養としても参考になる内容だった。

この本の有用性を理解するには,ある程度の知性が必要だ。しかし,この本の内容を理解できれば,プラットフォーム全般に対して良い戦略を立てることができる。マーケティングなど会社の上層部で意思決定力のある人が活用すると効果が大きい。

ビジネス書はあまり興味を持たないが,この本は手元に置いておきたいと思える内容だった。

パーマリンク: https://book.senooken.jp/post/2019/01/03/

書評☆3 本当は危ないAI・IoT・仮想通貨 最新サイバーリスク2019 | 2017-2018年に発生したセキュリティ事故カタログ集

概要

AI・IoT・仮想通貨をメインテーマとして,2017-2018年前半に発生したセキュリティ事故をまとめている。

内容は,以下の4誌に掲載されたニュース・記事を編集・加筆・修正したものとなっている。

  • 日経コンピュータ
  • 日経 xTECH
  • 日経NETWORK
  • 日経SYSTEMS

掲載されている文量がけっこうあり,近年のセキュリティ事故の傾向と,その対策がよく分かる。

社内のITセキュリティ担当者にとっては,最近のセキュリティ事故の把握と対策を練る上で有用な資料になると感じた。

参考

p. 26: 脆弱性が相次いで見つかるIoTウイルスのDDoSが脅威に

図4 IoTセキュリティのガイドラインが公開

公表時期 | 名称 | 公表団体 | URL
2016年3月 | つながる世界の開発指針 | 情報処理推進機構 | https://www.ipa.go.jp/sec/reports/20160324.html
2016年4月 | Internet of Things (IoT) インシデントの影響評価に関する考察 | 日本クラウドセキュリティアライアンス | https://www.cloudsecurityalliance.jp/newsite/?p=2079
2016年4月 | IoTにおけるID/アクセス管理要点ガイダンス | 日本クラウドセキュリティアライアンス | https://www.cloudsecurityalliance.jp/newsite/?p=1926
2016年5月 | IoT開発におけるセキュリティ設計の手引き | 情報処理推進機構 | https://www.ipa.go.jp/security/iot/iotguide.html
2016年7月 | IoTセキュリティガイドライン | IoT推進コンソーシアム | http://www.meti.go.jp/press/2016/07/20160705002/20160705002.html

政府などが出しているIoTセキュリティ対策の指針がまとまっており,参考になった。

p. 35: IoTシステムへの攻撃 攻撃手法と影響度を分析 ライフサイクルで対策検討

IoTシステムのセキュリティ脅威に対し、対策をもれなく実施するには、システムで利用する機器の要件定義や基本設計の段階から、セキュリティ要件や仕様を洗い出して適用していく必要があります。そのために有効なのが、「脅威分析」です。


その場合は、米MITREが策定した脅威情報の記述仕様「STIX (Structured Threat Information eXpression)」などが参考になります。STIXは、情報処理推進機構 (IPA) が概要を解説しています (https://www.ipa.go.jp/security/vuln/STIX.html)。


脅威の識別の具体的な方法としては、「STRIDE手法」が知られています。

セキュリティ脅威の脅威情報の記述仕様や識別方法を知らなかったので参考になった。

結論

セキュリティへの関心はあまり高くない。それでも,2017-2018年はコインチェックの仮想通貨大量流出やランサムウェアのWannaCryなど,大ニュースとなるセキュリティ事故が複数発生した。

どういう経緯で発生したのか,各社の対応はどうなっているのか,対策はどうすればよいのかといったことが過去のニュースを元にまとまっている。

ITセキュリティ担当者にとっては,有益な一冊であり,セキュリティ意識を高めるにもいい本だった。

パーマリンク: https://book.senooken.jp/post/2019/01/02/