概要
- 書名: 弁護士いらず [改定新版]
- 副題: 本人訴訟必勝マニュアル
- 著者: 三浦和義
- ISBN: 9784778310868
- 出版: 2007-08-15
- 読了: 2022-07-11
- 評価: ☆5
- URL: https://book.senooken.jp/post/2022/07/11/
評価
昭和から平成にかけて、日本中で話題となったロス疑惑の当事者である著者が獄中で取り組んだ約500件の本人訴訟の事例から、本人訴訟の指南書にまとめられたのが本書となる。
著者が直面したのが、マスコミによる名誉毀損だったため、この話がメインとなっている。
本人訴訟の個人の件数として、おそらく最大ではないかと思われる経験を元に、本人訴訟の手順やポイントが記されている。
書籍の構成としては、概ね以下の3部構成になっているようだった。
- 事務的な手続きに関する内容
- 裁判での争点の判決例
- 著者の1個の訴訟の具体例
肝心の中身は、当事者ならではの具体的な内容が満載だった。
ただし、判例の判決文などをひたすらだらだらと引用している部分がけっこうあるので、読むのはしんどい。また、マスコミの名誉毀損なので、一般の人には馴染みが薄い。
そういう点はあるものの、当事者による書籍としてはしっかりしていると思った。
参考
p. 9: 裁判費用
日本弁護士連合会が定めた「弁護士報酬等基準額」により、訴訟金額が500万円だと弁護士費用はおよそ50万円となる。
裁判費用・弁護士費用の見積もりに、こちらの基準額が参考になる。
p. 69: 判例集
裁判を有利に進めるために、類似の訴訟の判例を読むことを推奨しており、「マスコミ凡例百選」や「メディア判例百選」などを紹介していた。
p. 108: 本人訴訟の肝の部分
本人訴訟の肝の部分について説明していた。具体的には、名誉毀損の場合のポイントとなる法令として以下を上げて具体的な意味について説明していた。
- 民法709条不法行為の一般的要件・効果
- 民法710条精神的損害に対する慰謝料
- 民法723条名誉毀損
- 民法724条損害賠償権の消滅時効。
p. 318: 参考文献表
- 名誉毀損・プライバシー侵害に関する民事責任の研究 竹田稔
- 口語民事訴訟法 自由国民社
- 名誉毀損 平山信一
- 名誉毀損 のぞみ総合法律事務所
- ジャーナリズムと法 奥平康弘
- 相手を訴える法律知識 自由国民社
- マスメディアの自由と責任 清水英夫
- 訴訟は本人で出来る 石原豊昭
- 報道被害対策マニュアル 東京弁護士会人権擁護委員会
- 名誉毀損・プライバシー保護関係訴訟法 竹田稔
- 報道の中野名誉毀損・プライバシー 飯室勝彦
- マスメディア法入門 松井茂記
- 報道被害 – 11人の告発 山際永三
- 書式民事訴訟の実務 大島明
- 匿名報道 浅野健一
結論
おそらく日本の個人では最も本人訴訟をこなしている著者による本人訴訟の指南書だった。
事件自体が非常に話題になったというのもあり、本書は資料としての価値も高いと感じた。マスコミによる名誉毀損に立ち向かう場合はかなり参考になるだろう。
SNSでの誹謗中傷には使えなさそうなのは少々惜しかった。
また、本人訴訟の体験談としても、具体的な内容で、以前書評した「やっぱり!最後は本人訴訟」と段違いだった。
情報も古いものがあるのだが、本人訴訟の体験談としては一番参考になるだろうと思った。
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