概要
- 書名: 志高く 孫正義正伝 新版
- 副題:
- 著者: 井上 篤夫
- ISBN: 9784408552156
- 出版: 2015-02-15
- 読了: 2020-10-03 Sat
- 評価: ☆4
- URL: book.senooken.jp/post/2020/10/04/
評価
与沢翼に興味があり彼の著書を読んでいると,孫正義に言及することが度々あった。日本を代表する事業家となった孫正義だが,彼の経緯については知らなかったので,教養として彼の自伝を読んだ。
本書は孫正義が生まれてから,事業家として成功するまでが事細かに書かれた自伝となっている。関係者への緻密な取材に基づいて書かれており,かなり細かく書かれている。
全体の構成は時代ごとに以下の3部に分かれていた。
- 学生時代
- 起業後
- 事業拡大
3の事業拡大の部分は話が若干飛び飛びになっていた。
高校1年生でアメリカの高校に留学して,そこから飛び級で名門のバークレー校に入学。在学中に飲食のビジネスや,発明のビジネスで起業。大学卒業後に本で日本ソフトバンクを起業。最初はソフトの商社から始まり,PC関係の雑誌,そこからソフト事業から一気に話が広がり,通信キャリアやインターネットのビジネスに広がっていった。
ホリエモンの自叙伝の「ゼロ なにもない自分に小さなイチを足していく」や与沢翼の「スーパー フリーエージェント スタイル」を比べて,似ているところを感じた。
学生時代にしっかり勉強して,いい大学に入学して,チャンスを掴んでいる。また,幼少時代に転機となるできごと,身の回りに助けとなる人物がいたこと,このあたりが共通点に感じた。
ある程度レベルの高いところに行かないと,飛躍できないという点から,学生時代の勉強の重要性を感じられる。
読み応えのある内容で読了に2週間ほどかかってしまった。
引用
p. 16: 序 正夢
孫正義は父・三憲 (みつのり)、母・李玉子の四人の息子の次男として、昭和32 (1957) 年8月11日、佐賀県鳥栖市五軒道路無番地で生まれた。
正義は在日韓国人三世 (現在は日本に帰化) である。
孫家は、もともと中国から韓国に渡ったとされる。祖父の時代に、韓国の大邸 (テグ) から吸収に移り住んだという。
系図によれば、孫家は代々、武将や学者が多かった。
祖父、孫鐘慶 (ソンゾンギュン) は、築豊炭田で坑夫として働き、生計を立てた。
正義の父、三憲は、魚の行商から養豚業、ときには闇の焼酎作りにも手を出し、なりふりかまわず働いた。やがてパチンコ屋、飲食業や不動産業などで経済的な基盤を築いた。
孫正義の家柄が書かれていた。
p. 39: 3 人生の衝撃
こちらでは現在の妻である大野優美との出会いが書かれていた。1974年2月に高校1年生だった孫正義がアメリカの英語学校 (ELS) に入学して2-3週間で出会ったらしい。孫正義の2歳年上で大学生で結婚するまでここから一緒だった。
p. 52: ユダヤの商法
こちらではアメリカに来る前から事業をやりたいと思っていたというエピソードとして,日本マクドナルド社長・藤田田著の『ユダヤの商法』を読んで感銘を受けて,直接面会を申し込んだ話が書かれていた。
p. 62: 孫の発明のプロセス
孫正義の逸話として有名な学生時代の5分間の発明の中で気づいた3の発明プロセスについて書かれていた。
- 問題解決法
- 水平思考: 逆転の発想
- 組み合わせ法: 既存のものを組み合わせる
特に3番目の組み合わせ法により,大量の発明を実現している。
p. 67: 音声機能付き電子翻訳機
組み合わせ法をコンピューターを使って試した。パーツ毎に新しさ,大きさ,などの要素を40ほど組み込んで何百万通りもの組み合わせから重みをかけ合わせたものを点数順に並べて検討していく。
その中で,250絞り込んで「音声機能付き電子翻訳機」というコンセプトを導き出した。そして,これを自分では実現できないとして,所属していたバークレー校にいたその分野の権威である大学教授に持ち寄って事業化した。
p. 96: 結婚
こちらでは孫の結婚のエピソードが書かれていた。孫21歳,優美23歳の学生結婚だった。
p. 122: あこがれ
学生時代の起業での成功エピソードが書かれた後に,幼少期の細かいエピソードが書かれている。
その中で,中学三年生でのエピソードが印象的だった。中学三年生に,北九州の中学から福岡の名門中学に転校すると,それまでオール5だった成績がオール2になった。これに危機感を持った孫は全校1位の級友に相談した。そこで,塾への入学を勧められた。
しかし,ここで入塾を最初拒絶された。これを級友の母にお願いしてもらい,入塾を許可された。ここで入塾できていなければ,その後の成功はなかった可能性が高かった。
p. 126: 竜馬がゆく
こちらでは孫正義の愛読書である竜馬がゆくについて書かれていた。孫は戦国武将に憧れており,織田信長や坂本龍馬に憧れを持っていた。
p. 212: 21 荒ぶる魂の叫び
日本で創業した日本ソフトバンクの黎明期に孫正義が難病にかかっていた話が書かれていた。
結局,奇跡的に新しい治療法で肝臓の病気を治すことができたそうだ。
p. 288: ソフトバンク
日本ソフトバンクとノベルの共同出資でノベル日本法人が設立された1990年の春に日本ソフトバンクからソフトバンクに社名変更された。
結論
日本を代表する事業家の孫正義の経歴が事細かに書かれており,どういう経緯をたどってきているのかがわかった。
ただ,わかって思ったのは,やはり自分では再現するのは無理だろうということだ。自分の過去を振り返っても,このような大志を抱くことはなかった。家に閉じこもってゲームするくらいで,他にやりたいことも特になかった。
あとがきで社外取締役の柳井正が読むだけじゃなくて,行動しろと書いてある。勿論わかるのだが,具体的に凡人に何ができるのか?いうのとやるのとでは全然違う。
天才的なものを持って生まれて,身の回りに助けてくれる人がいたから成功できたという面が強いと思った。
あくまで教養として,偉人のエピソードを知識として知るに留めるくらいしかできないと思った。孫正義が読んでいた「ユダヤの商法」と「竜馬がゆく」は読んでみたいと思った。
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