書評☆3 テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図 | 政府統計情報の雇用情勢に基づく将来の産業展望

概要

テクノロジーにより産業が大きく変わってきた。近年もAIやIoT,ロボットなどのテクノロジーにより,今後の産業構造が大きく変わる可能性が出てきている。

この本ではそうしたことを踏まえ,政府の統計情報を元に,過去と現在の雇用情勢・人口統計,給与などを比較考察し,今後産業がどうなっていくのか,そのトレンドを考察していた。

政府の統計情報を元に,雇用情勢や給与などを業界ごとに比較し,それぞれの業界の特徴や傾向を細かく比較していたのが印象的だった。

現在の日本では働き手不足であり,今後もそれは続く。AIにより仕事がなくなるどころか,それらを使ってでもどうにか労働力を確保せざるをえない状況になっていることがわかった。

参考

p. 87: 非正規雇用労働者の比率が高まる3つの理由

  1. 若年世代の人口減による労働市場への参加人数が減少してきている
  2. 55歳以上の男女が非正規雇用労働者として労働市場に参加してきている
  3. 非正規雇用が中心となっている女性の働き方

非正規雇用労働者の大半は女性か55歳以上というのが驚いた。なんとなく若者の非正規雇用が多いのかと思っていたが,そうではなかった。そもそも,少子高齢化で若い働き手は減っており,AIに仕事を奪われるどころか働き手自体が足りていないということがわかった。

p. 107: 就業人数の多い産業ほどロボット・AI導入の影響は大きい

図表3-1は、「労働力調査」のデータをもとに、2018年3月とその10年前の2008年3月の主な産業別就業者数を示したものである(※2 http://www.stat.go.jp/data/roudou/longtime/03roudou.html)。

労働者数でいうと,製造業,卸売・小売業,医療・福祉が多く,医療・福祉に関しては10年前と比べて就業者数が30 %以上増加している。こういうトレンドがわかって参考になった。

p. 142: トヨタ自動車の国内生産台数はすでに減少トレンド

自動車メーカーとしては、「自動車を生産し販売する」というモデルから、「輸送サービス事業」に転換することが急がれる。

実際2018年5月に開かれたトヨタ自動車の決算説明会での豊田章男社長のコメントが印象的だ。

"私は、豊田を「自動車をつくる会社」から、「モビリティ・カンパニー」にモデルチェンジすることを決断いたしました。「モビリティ・カンパニー」とは、世界中の人々の「移動」に関わるあらゆるサービスを提供する会社です。" ※17 http://www.toyota.co.jp/pages/contents/jpn/investors/financial_results/2018/year_end/speech.pdf

日本を代表する製造業であるトヨタ社の大きな方針転換の発表だった。

p. 184: どの産業が侵食され、人間の何が評価されるか

ロボット・AIといった新たなテクノロジーや機械によって人手が代替される可能性がある産業には、次のような特徴が見られるのではないだろうか。

  1. 成長市場で人手が足りない産業: 運輸業、福祉
  2. 就業者数が多い産業: 製造業、卸売業、小売業
  3. 平均給与が高い産業: 金融業、保険業
  4. 平均給与が低く、人手を集めにくい産業: 農業、林業

こうして見ると、完全に安泰な産業など存在しないのではないかと思えるが、対人でサービスを行う「サービス業」や、専門性・創造性が必要とされる「学術研究/専門・技術サービス業/教育/学習支援業」は、最後までテクノロジーに代替されにくいと考えられる。

AI・ロボットにより人手が代替される産業とそうでない産業の考察が参考になった。

p. 210: 企業にとってもきちんとメリットのある「副業文化」

簡単にいえば、企業にとっては次のようなメリットがある。

  • 社員が外部との接点をこれまで以上に持つことができ、ひいては社内のビジネス機会が増える可能性がある
  • 仕事環境の自由度を求めると同時に、社員の成果をより突き詰めることができる
  • 社員全員分のオフィスを用意しなくともいい

企業に副業を推進する際の,企業側のメリットの参考になった。

結論

政府統計情報をベースにしており,信頼性の高い考察が展開されていた。

マーケティングや今後の新事業の検討,就職活動での業界選びの参考になりそうだと感じた。

パーマリンク: https://book.senooken.jp/post/2018/11/20/

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