書評☆4 MastodonからYouTuberまで。松尾公也さんと語る「情報発信」のカタチ | 「マストドンつまみ食い日記」の中の人によるMastodonの企業利用の課題やMastodonの価値など

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概要

日本で最もMastodonについて書いているITmediaの編集者・記者であり,Mastodonに関する連載の「マストドンつまみ食い日記」の担当者の一人でもある松尾公也とのMastodonに関する対談を綴ったメールマガジンの内容をまとめた電子書籍となっている。

具体的には,2017-09-01発行のVol. 140から2017-10-13発行のVol. 145までで6回に分けて掲載された内容を抜粋したものとなっている。

試しに,検索でヒットするVol. 143を購入して中身を確認したが,本当に中身が抜粋されていた。Mastodon関係の話題を読むだけならば,こちらが1冊にまとまっていて効率がいい。

ITmediaがMastodonの連載をするようになった経緯が書かれていたり,過去に似たような経緯でブームになりかけたセカンドライフなども引き合いに出して,書籍の2/3ほどMastodonについて議論されている。

残りの1/3はYoutuberでmstdn.guruを運営するdrikinに関する話題だった。

ITmediaの連載の裏話など,Mastodonブーム開始当初から継続的にMastodonに関わって来た記者ならではの視点や考えが書かれておりよかった。

参考

■ネットサービスと「流行り廃り」

松尾: ひとつ問題だと思っているのが、今セキュリティ的にひとつ甘い部分があって。今、メールアドレスをログイン時に使わなくてはいけなくて、それを収集してしまうことがあるんですね。それがサーバ上に置かれている、ということをコンプライアンス上、問題視する企業というのが多くて。

企業がMastodonを使う上で今まで気づかなかった問題点が指摘されており参考になった。

■Mastodonに乗った企業の今後

松尾: SNSを実験的に、自分のコミュニティでどれだけできるか、ということを試すぶんにはすごくいいと思うんですよね。ただそこで、どういうふうな商売になるかということを、自分たちがどれだけネタをSNSの中に提供し続けることができるか、ということにも繋がるわけで。それができないところは大体終わっていくんじゃないかと


松尾: もとのコンテンツがあったとしても、積極的に人を引っ張ることが会社の中でできていないと、やはり難しい部分がある。


西田: 各個人が例えばブログだとか、個人ホームページを持った時に、BBS機能を付けたがったじゃないですか。でも冷静に考えると、あれって面倒くさかったですよね。本質的には、マストドンがやろうとしていることはあれだと思ってるんですよ。


西田: だとするならば、いわゆる「お金になるから企業をひっ捕まえて」というよりは、個人がコミュニティを作りたいんだったらこれで簡単に作れるし、機能的にも楽だから、こっちに来るんじゃないの、という流れが本質的なのかなと。

Mastodonの企業利用についての言及されていた。ここでの言及内容はけっこうあたっており,積極的にユーザーを引き込めるコンテンツがあり,努力もしているPixivや,閉鎖してしまったドワンゴがある程度成功していた。

しかし,その他の企業サーバーはいまいちなままで徐々に閉鎖していっている。

一方,仲間内でわいわいやるような使い方がけっこう残っているように感じている。ここで言及されている内容はけっこう当たっているように感じる。

■複数のSNSを「使い分ける」価値とはなにか

西田: というのは、SNSがもう既に強固なものがあるんだったら、それと同じことをするんだったら要らないんじゃないの、って言われるわけですよ。じゃ、既存のSNSとは違うことは何か、というと、多分今おっしゃられたような、LIVEで、何が起きたかというのが全部残っている,しかもそれを簡単に見られるし、人にもう一回入ってもらうこともできるし、運営もできる部分なのかという気はしますね。


松尾: Twitterを見たとしても、Twitterはいろんなペルソナを持っている、それの集合体なので、例えば自分のことだけを話しているわけでもない。その人のツイートをずっとフォローしてても、ノイズが多すぎて、追うこともできない。

でも、特定のインスタンスであれば、その中にあるものだけを追っていけば済んじゃう、と。

西田: そうすると、それぞれのインスタンスの特質を理解する、理解を誘導するための仕組みだとかっていうのが足りないのが今の状況なのかなと。

松尾: そうですね。総合的なインデックスページがない、ということですね。そこは、マストドンの運営も今少しは考えていて。

joinmastodon.orgというページがあって、そこでいくつかの質問に答えていくと、適切なインスタンスを教えてくれるんです。まだ日本語にも対応してないし、不完全なものですけど。


西田: 個人的には、一般的なSNSと混ぜて使うアプリケーションがもっと出てきたほうがいいのかなと思ってるんですね。


松尾: や、一応あるんです。「Ore2」というやつなんですけれども。

ここで言及されている内容は,mstdn.jpにおけるMastodonの文化祭だとか,オフパコ事件だとかを連想した。こうしたLIVE感がサーバーの中で感じられるのが,SNSを使い分ける価値にも繋がるという感じだろうか。

あと,Ore2というアプリは初めて知った。

結論

「マストドンつまみ食い日記」の中の人の一人としてブーム当初から関わってきた著者によるMastodonに対する考えが書かれていた。

セカンドライフなど過去のブームも引き合いに出しながら,ポイントが手短に書かれており,参考になった。文量もほどほどで一気にさっと読めた。

ここで書かれていた企業利用の課題やポイント,今後の動向は当たっているところもあり,本質を突いている部分もあるように感じた。

この連載だけまとめて本にしていただいたのはとてもよかった。個人的には,文量が物足りないので,もっと長く読みたかった。

パーマリンク: https://book.senooken.jp/post/2019/09/11/


MastodonからYouTuberまで。松尾公也さんと語る「情報発信」のカタチ: 小寺・西田の「金曜ランチビュッフェ」対談シリーズ

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